香るわたしにキスをして　最終回 / 結末

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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《―――時は 古代中国の『殷王朝』　　渭水のほとりで 道士がひとり 針もつけずに釣り上げたるは…》

クンッ

ぐいっ

《女の子》

ザバ――ッ

《――はるか昔の中国『殷王朝』では 仙人や道士、人間や妖怪が入り乱れて共存し》

《人界の王の治世が荒れた時、仙界から使いの者が現れて　　新たな王朝を建てるという伝説がありました》

《その使いの者を 人々はこう呼んだのです》

《『太公望』と…》

「はぁ～♥　やっぱり『封神演義』って最高よねぇ～　　ねっ さきちゃん♡」

「もう お母さん！」

「その話は なんっっ百回も聞いたよ」

「だって 何度読んでも面白いんですもの～」

『私は 大和さき 日本の女子高生』

（まったく　毎朝毎朝『封神演義』の話ばっかりなんだから…）

『そして この『封神演義』大好き人間が 私のお母さん』

「さきちゃんも読んでみてよ　　きっとこの面白さがわかると思うわぁ～」

「い・や」

『私が物心ついた時には 既に父の姿はなく』

『女手ひとつで ここまで育ててくれた 自慢のお母さんなのだけど…』

『この封神オタクっぷりは どうかと思う…』

ず――ん

【母’s『封神演義』コレクション】

ペラ…

うふふ♥　ふふ

ペラ…

「って　また読みふけってるっ！！」

「ねえ！　さきちゃんは この中だと誰がお父さんだったらい～い？　　お母さんのオススメはね～♡」

はあ　はあっ

「二次元の父親なんて お断りっ！　　っていうか 朝食作ってる途中で座り込んで読まない！」

「や～ん♡」

「だって お母さんの初恋なんだもの♡　　さきちゃんもきっと 好みの殿方が見つかるわよ～」

ほう…

「はいはい どうせ初恋もまだですよ…」

『『封神演義』の話をする時の母は まるで恋する乙女だ』

（何がそんなに いいんだか…）

「あ　　お醤油 切れてる」

「お母さん お醤油の買い置きって　　物置きだっけ？」

「そうよぉ」

ガタ　ゴト

「あった あった」

「うーん　結構 奥に入り込んじゃってるなぁ…」

『生まれてこの方１７年 恋とは無縁の生活を送ってきた』

『一番の原因は…』

「よいしょっと」

ひょいっ

『この人並みはずれた『怪力』だ』

「はぁ…　　何で私 こんなに馬鹿力なんだろう」

『女の子には頼りにされるけど』

『男の子は恐れおののいて みーんな逃げていく…』

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