フルーツバスケット、最終話 完結23巻 感想
※ネタバレ注意です※
この物語は「家族」というワードがとても重要になっています。
主人公はその主人公を取り囲む登場人物は皆「家庭環境」に何かしらの問題を抱えており、高校生の登場人物たちは葛藤をしながら友情、愛情を育みながら成長をしていきます。
登場人物たちはある特殊な一族「十二支の獣つき」であり、異性に抱き着かれると十二支の動物に変身をしてしまうという特殊な体質で、家族に阻害され、虐待され、ひどく傷ついています。
そんな人物に対し普通の人間である主人公の女の子は、すべてを包み込む愛情で主人公たちと絆を深めていきます。
最終話では、獣つきの呪いがとけて、ハッピーエンドとなります。
その中で、物語の中で最も辛い人生を送った少年「夾」と、夾に恋をして、夾のすべてを愛し救った「透」が、自分たちが最も欲しかった「家族」を得ることができた場面で終わります。
夾と透の孫が「おじいちゃんとおばあちゃんは?」と父親と母親に訪ねます。
この父親と母親のどちらかが、二人の子供です。母親は「二人だけの時間を楽しんでいるから邪魔しちゃだめ。」と孫にいいます。
場面は変わり、初老となった二人が手をつないで仲良く歩いている後ろ姿で物語は幕を閉じます。
この後ろ姿を見て、涙が流れました。
物語で起きた出来事、二人の試練を思うと、どれだけ強い絆で結ばれていたのか。
そして、二人が最も欲しかった「家族」を得ることができた喜びに共感することができました。
また、最終話の中では二人の思い出の写真や置物、そして「数珠」が棚に飾られています。
この数珠というのは、「夾」を苦しめていた「獣つき」の数珠です。「夾」は獣つきの中でも最も穢れているとされている「猫つき」の体質で、将来は「幽閉」されることが決まっていました。
猫つきは、この数珠が腕から外れると、とても醜いバケモノの姿に変わってしまいます。
そのせいで、彼の母親は自殺をしてしまい、父親は未だに「母親殺し」と夾を責め続けています。
つまり、かつての「夾」にとってはこの数珠は戒めなんです。
母親を殺してしまった自分、家族を壊してしまった自分、バケモノの自分。
しかし「透」と絆を深めることで、結果的に夾は獣つきではなくなりました。
戒めであるはずの数珠を、自分たちの他の幸せな思い出の品と一緒に飾ってあるということは愛する「透」との大事な絆の一つになったということだ、と解釈をした時、胸がキュっと締め付けられました。
最終話では、長い物語の中で、泣いて、足掻いて、苦しんだキャラクター達がそれぞれ幸せになろうと前向きに歩み始める描写がたくさんありました。
フルーツバスケットのキャラクター達は本当に全部が魅力的です。
私は、一番好きなキャラクターは「慊人」です。
彼女は、獣つきを統べる、十二支の神様で、長い歴史の柵の中で少しずつ狂ってしまいました。
男性として育てられ、愛に飢えていました。
性根の腐った大人たちの中で育てられたため、子供のまま成長してしまいました。
物語当初は十二支の「獣つき」をまるでおもちゃのように扱っていました。
しかし、主人公の「透」が現れ、十二支の面々に少しずつ変化が現れ始めます。
それに焦りを覚える慊人でしたが、慊人もまた、「透」のすべてを包み込む愛に少しずつ変わり始めます。
最終話に近づくにつれて、自分の本当の姿を皆にさらけ出し、すべてを自分で背負い、腐ってしまった一族を少しずつ良い方向へ導こうと意思を固めます。
覚悟を決めた彼女の姿は、誰よりも輝いており、こちらも胸をうたれました。
どのキャラクターも魅力的ですが、なんといっても主人公の「透」がまるで聖母のようで、こんな女性になれたらどんなに素敵だろうと、そう思うくらいに魅力的なキャラクターです。
最終話は涙なくては読めない素敵な作品でした。