マダム・プティ、最終話 完結11巻 感想
※ネタバレ注意です※
母国のため、10年間王座に立つことを決意したニーラム。
今一緒にいることよりも、この先2人で生きていくために10年間離れることを選んだ万里子。
でも、ニーラムの治めるインドは情勢が不安定で、本当に10年後に一緒になれるとは限らない。
ものすごく怖い賭けなのに、お互いの事を信じて、万里子は決断するんです。
しかもわずか16歳で。
どれほどの強い想いがあればその選択をできるのでしょう。
別れを前に、二人ははじめて結ばれます。
初めて迎える朝、万里子が眠るベッドに敷きつめられた花。
花の棘で手を傷だらけにしたニーラム。
侍女に命じるのではなく、万里子のために自らの手で花を摘むニーラムの行動に、万里子への愛と慈しみがあふれています。
そしてこのシーンのページの美しさ!
とってもロマンチックです!
どこまでも甘い2人の蜜月もあっという間に終わり、別離の日がやってきます。
万里子を乗せた船が港を離れる時、そこにニーラムはいません。
父王が手掛けてきた国の事業の式典に参加しなければならないためです。
愛する人と10年も離れるのに、見送ることもできない。
ニーラムが背負っている国というものが、どれほど重いものかが良くわかります。
出航時間に見せたニーラムの表情!!
切なくて寂しくて、もらい泣きしてしまいます。
本当はそのまま馬で駆けて、万里子のもとへ行きたいはずなのに、
ニーラムの立場は、恋をするにはあまりに不自由です。
それから月日はすぎ、10年後。
あの、大胆で無邪気で小さな万里子は立派なレディとなり、アメリカで暮らしています。
聡明さはそのままに、立ち居振る舞いが洗練され、この10年の間、ニーラムの横に並ぶその日のために、彼女がどれほど努力を重ねてきたのかが想像できます。
世界が戦争に巻き込まれようとしている情勢下で、異国で生きていくってどれだけ大変な事だったのでしょう。
一方インドでは、ニーラムの兄パドマの息子ラーマが10歳となり、中継ぎとして立っていたニーラムが、ようやく王座をラーマに手渡すことが出来ることになりました。
もちろん、ニーラムは万里子のもとへぶっ飛びます。
万里子に届けられた手紙とほぼ同じタイミングで到着するニーラム。笑
10年前、自らの運命に翻弄されながらも、
常に前向きに、文字通り走り抜けてきた万里子。
大人の女性となり、そうそう走ることはなくなった万里子が、ニーラムとの再会シーンでは、彼に向って一直線に走っていくんです。
10年って漫画では一コマですぎるけど、実際はものすごい長さだと思うんですよね。
お互いの顔だって声だって忘れてしまいそう。
しかも、今とは違って手紙でしかお互いの近況を知ることが出来ない。
支えを見失い、くじけそうになる日もきっとあったと思います。
そんな日々を耐え抜いた二人の再会。
もう涙なしには見れませんでした。
ずっと見ていたい、この見開きページ。
そして大人になったニーラムも最高にいい!!
もともとセクシーだったけど、国を導いてきた自信が滲み出て、大人の色気が5割増しです。
王位は退いたとはいえ、これからも国のために前線で闘い続けるニーラムですので、結婚後も大変な試練がたくさん待ち構えている事でしょう。
それでも二人で一緒にいられるなら、物凄く幸せで、いくらでも乗り越えられてしまうんだろうなと思います。
どきどきしっぱなしの最終回でした。
1コマ1コマ大切に丁寧に読んで、終わるのが寂しくて・・・
読後はためいきしか出てきません。
高尾先生の描くヒロインは、みんな正義感と母性が強く、まっすぐで不器用なので、見ていてハラハラしたり、もどかしかったりすることも多いのですが、葛藤し、自分を恥じ、物語の中で必死に生きているその姿は、ただただ愛おしいです。
ときめき不足の大人の女性に読んでほしい、とっておきのロマンチックストーリーです。