健康で文化的な最低限度の生活、8巻 感想
※ネタバレ注意です※
第7巻から続いた子供の貧困編が完結しました。
ネグレクトをしていた美琴がようやく生活保護を受けたと思ったら、妊娠が発覚したところで終わった前回から引き続き、子供の父親探しから8巻はスタートします。
同じ養護施設で育った堀田千尋の行方を追い、ようやく連絡がとれた義経達は、堀田に美琴の現状を伝え、今後の生活についてどうするかを考え始めます。
「常識」で考えれば、2人の子供を養育し、生活保護を受給しながら更に子供を増やすということは世間の目からすればとても「非常識」なことであるということを、美琴の担当である栗橋は思い悩みます。
結局、美琴は出産を決意し、栗橋もその気持ちを全力で支持しサポートすることになりましたが、きっと現実では「常識」で考えて出産を諦めてしまうことが多いのではないかと思いました。
私達の思う「常識」とは、人に迷惑をかけないこと、世間から批難されないように生きることが「常識」だと思われることが多いと思います。
ですが、一人一人の幸せを考えたとき、その「常識」は決して当たり前ではないことだってあるのではないでしょうか。
今回、美琴は理解あるケースワーカーが担当であったから、出産を決意し、出産に向けて多くの支援を受けることが出来ました。
ですが、先にも述べたように、この「常識」に捕われてしまったが故に、個人の幸せを諦めてしまった人が現実には多いと思われます。
生活保護を受給しながらアルバイトをしてしまった欣也も看護の専門学校へ進学するべく、勉強を開始しましたが、勉強が上手くいかないことに加えて、受験をすることや合格後の生活について「常識」で考えると厳しいものが待ち、諦めた方が良いのではと思い悩みます。
しかし、欣也も自分のやりたいことに真正面から向き合い、この「常識」を打ち破って、夢に向かって突き進みます。
美琴も欣也も、それぞれ自分の気持ちに正直になって、自分の幸せを掴むために一歩踏み出す姿は、なんだか勇気付けられるものがありました。
この作品はいつも社会で起きている問題を取り上げていますが、今回の「子供の貧困」については特に考えさせられるものがありました。
私達の思う「常識」とは一体何なのか。
「常識」のために子供の未来を奪って良いのかどうか。
貧困が生むの負の連鎖をどうやれば断ち切れるのか。
現実に起こっているこの大きな問題を私達は本気で考え、向き合っていかなければならないのだなと思わされた巻でした。