私がこの作品にはまった理由は3つあります。
まず、一つ目に様々なジャンルの和洋中の家庭で作れる美味しそうな料理がレシピ付きで出てくる点です。
主人公の青年は料理が好きでとても上手なのですが、各回に家族で食卓を囲む場面が出てきて、ほのぼのと温かい気持ちになると同時にお洒落な盛り付けのセンス、テーブルコーディネート、これまたプロ級な腕前の料理が登場します。
それがとても刺激になり、新たなレシピや盛り付け等が学べる魅力的な漫画になっているのです。
理由の二つ目は登場人物の全員がどこかしら魅力的で、誰一人として憎い、許せないという感情を抱くような性格の人が出てこないことです。
主人公の青年は産みの母親に捨てられた過去があり、その母親と数年後に再会を果たすのですが、この母親も酷い部分も勿論あるのですが、当時の環境や若すぎた年齢などがそうさせてしまったのか、と思えてしまいます。
そして、この母親は主人公の青年の弟にもネグレクトのような行為をしていたのですが、あまりにも精神的に余裕がなく、不安定でカウンセリングが必要なレベルで、シングルですべての問題を問題一人で抱え込んで育児をしていてそうなってしまったのかと深く考えさせられました。
最終的には、青年をはじめとする周囲の協力や支えによって本来の真面目で慈悲深い性格を取り戻し、良い母親になるのですが、私には簡単にこの母親を冷酷なだけの人間には思えず、どこか可哀そうに思えてしまう程に放っておけない子犬のような人に感じたのです。
それは、作者の力量によるところが大きいのだと思います。
作者さんの人柄は分かりませんが、いろんなタイプの性格の登場人物が魅力的に見えるのは、作者の方がそれぞれの登場人物の性格をよく作り上げ、寄り添い心情を理解しようと心がけているからなのかなと感じます。
そしてキャラクターの見せ方があ上手いのだと思います。
母親以外にも、まだまだ魅力的な方は沢山いて、青年の育ての母親はどこまでも器が大きい、温かく包んで見守ってくれるような人だったり、妹や弟は憎たらしい部分もあるけれど、可愛らしく人間味溢れる人柄だったり、友人のチャラく明るいタイプの男性やオタクな偏屈男も、みんなそれぞれに充分に魅力的でずっと見守っていたくなるような愛くるしい存在に思えてきます。
最後に理由の三つ目です。それはやはり、様々な登場人物の恋愛模様が気になって仕方がなかったからです。最も応援していたのが、主人公の青年と地味目な漫画家志望の女の子との恋でした。
青年は誰もが振り返るくらいの美少年ですが、謙虚で誠実、かなりのお人好しで自分の魅力に全く気付いておらず、恋愛にも奥手気味です。
実際にこんな人がいたら誰もほっておかないとも思うのですが、この青年の一番の魅力は芯がかなり強く、揺らがないところだと思います。
だから、好きになった女の子にも一途で目移りなど一切しない感じで更にイメージアップで素敵なんです。
最終的には恋人同士になる運命の女の子についてですが、容姿はいたって普通、あまり目立たない地味なタイプですが、とても思いやりのある性格です。漫画家になるという夢には一直線でとにかく熱いです。
そして真面目で粘り強く、この方も一途で誠実な人柄です。
この女の子の魅力や良さに早い段階から見抜けた彼は本当に見る目があると思います。
奥手同士の二人ですから、全く進展は遅く、毎回読むたびにやきもきしてしまうのですが、そこのところも作者さんの狙いなのでしょう。
でも、その分、ラストで晴れて恋人同士になった時は身近にいる友人の結婚話を聞いた時並みに感動し泣いてしまいました。
この二人以外にも、青年の弟や妹は中学生から恋人がいてラブラブでリア充な学生生活を送っているのですが、それがまた古い時代のように純粋で一途で、真っ直ぐで、心が洗われるような恋で、とても素敵だと思うシーンが多くありました。
今では忘れてしまっていた、恋焦がれるような感情を思い出し、キュンキュンしながら応援してしまいました。
私自身、この作品に出会えたことに感謝ですし、既に物語は完結してしまいましたが、この作者の新作も是非読みたいと思っています。
様々なジャンルの作品を出されていますが、すべての物語に共通しているのが、大事な感情や気持ちに気付ける内容になっていて良い刺激を沢山受けられることです。
私にとってこの作者さんの漫画すべてが人生になくてはならない教科書のような作品だと思っています。
