主人公の水谷雫は、普通の女の子が憧れる恋愛や友情、おしゃれなどに関心を向けず勉強ばかりしている女の子です。
一見冷たい感じがする彼女ですが、心の中はとても暖かく、感情豊かだと思います。
そのため雫の心の動き一つ一つに共感でき、読んでいて心地良いです。
そんな彼女がハル(吉田 春)という男の子と出会います。ハルの行動はどれもびっくりするようなことばかりで、読んでいる方は雫と一緒に驚いたり、ときめいたりしてしまいます。
怖い顔ですごんだかと思えば突然ニコニコして照れたり、人恋しくて仕方がないのにうまくいかなくて傷ついていたり。時々孤独な影を感じさせるところも女心をくすぐります。
ハルは怖いけれど可愛いピュアすぎる男の子です。
変わり者で、暴力沙汰を起こしたことがあるため他の生徒からは恐れられ、避けられています。雫の立場からすればまるで猛獣に懐かれてしまったようです。
自分だったらこんなややこしい男の子と恋愛をするのは大変だろうなあと思うのですが、雫は読者に代わってその厄介な役割を引き受けてくれます。
いわば、読者は安全圏から、雫に感情移入しながらちょっと危険な男の子との恋愛気分を楽しむことができるのです。
第1話のラストで突然、ハルが雫に告白した時は衝撃を受けました。
もちろんこれでハッピーエンド、というはずはなく、これが2人の出発点になります。
第2話ではいきなりハルが雫にキスをします。このように、1話ごとに驚くような展開が入っているため物語にどんどん引き込まれていきました。
奇妙な関係を続ける2人の前に、夏目あさ子という同級生の女の子が登場します。
雫に勉強を教えてほしいと申し出る夏目さん。男性にモテすぎて女の子の友達ができないと悩む夏目さんは、どこかずれている感じがおもしろいキャラクターでとても気に入りました。
ハルと夏目さんはどこか似ていると思います。
人一倍、他の人との関わりを求めているのに満たされない…そんな彼らが雫の元に集まるのは、雫が他の人とは違うと感じているからなのでしょう。
雫には裏表がなく、思ったことをズバリと言います。だからハルや夏目さんも遠慮なく本音でぶつかることができるのです。
また、ハルたちは人と関わらなくても平気な様子で堂々としていられる雫に憧れも抱いているのだと思います。
第3話のラストで、逆に雫がハルに告白したシーンは屋上から見る青い空がとても印象的で、心が解放されたような気持ちになりました。
続く第4話で、雫の告白ははぐらかされたような形になってしまい、とてもやきもきしました。
しかしその後、雫は思い切って自分の想いを再びはっきりとぶつけ、ハルもそれに応えます。
このシーンは1巻の中でも特に見応えがあります。雫のまっすぐな瞳がとても美しいと思いました。
「となりの怪物くん」は読み心地がとても爽やかです。
気まずいシーンも少しユーモアを交えて描かれていて、重苦しくなりません。
それでいて物足りないということは決してなく、シリアスなシーンでは登場人物の心情がしっかりと伝わってきます。
第1巻のラストでは、ハルが突然雫に「今日、どっか泊まるぞ」と衝撃発言。
最後のコマには謎の美青年も登場し、続きがとても気になります。
2巻以降もますます目が離せないと思いました。