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天は赤い河のほとり 全28巻 感想とご紹介

投稿日:2018年4月5日 更新日:

SFファンタジーの中でも「天は赤い河のほとり」は、広げた大風呂敷をとてもうまくきれいにまとめた作品です。絵もとても綺麗で、ストーリーも歴史的な史実に基づいており、矛盾なく楽しめます。
主人公のユーリは、ごく普通の中学生でしたが、ヒッタイト帝国の皇妃ナキアの魔術によって、古代ヒッタイトに連れ去られてしまいます。
初めは、とまどうユーリでしたが、強い信念と明るさで周りの人から愛され、どんどん成長していく姿がとてもかっこいいです。様々な策略に巻き込まれますが、それをどれもすかっとする方法で攻略していきます。
また、出てくる男の人が誰もかれもみんな美形で素敵です。特に、ユーリと結ばれることになる、ヒッタイト帝国の皇子(のちに皇帝)カイルは、顔はもちろんですが、性格も超男前です。ユーリだけでなく臣下や国民に対してもとても愛情深く、皇帝の器を感じさせます。
天は赤い河のほとりは、少女漫画でありながら、戦闘シーンもとても多いです。戦争の真実を描きながらも、少女漫画の美しさは残しており、グロが苦手な人でも大丈夫と思います。単純な戦いのシーンだけでなく、さまざまな作戦を考えるシーンなどは、とても緊迫してハラハラドキドキしながら読むことができます。ナキア皇妃との攻防は、時にはイライラしながら、手に汗握る展開が最終巻まで続きます。
少女漫画ならではの恋愛場面もたくさんあります。ユーリとカイルは基本的にいつもラブラブで、とても素敵なカップルです。特に、ユーリが現代へ帰ることをあきらめて、ヒッタイトに残りカイルのそばで生きていくと決めた場面は、感動的です。自分のために、現代での生活を捨て、家族を捨てたユーリを全力で生涯守っていくと決めたカイルとその思いにこたえたユーリが描かれていてとても好きなシーンです。
後半では、史実にもあるエジプトとヒッタイトの戦いも描かれています。エジプト戦ででてくる、ラムセスとカイルは戦いでもユーリを巡っても障害のライバルとなります。ラムセスとは、国が違い戦かわざるを得ない環境でしたが、時代が違えば、ユーリやカイルともいい友達になれたのではないかと思います。
皇妃ナキアと側近ウルヒの物語も、とても好きです。ナキアは、決して許される存在ではないけれど、その生い立ちはとても同情できるし、息子であるジュダへの愛情は本物だと思います。ウルヒのナキアに対する思いも胸が締め付けられるものがあります。
サブキャラもいい味を出しているところも魅力的です。ユーリの側近である三姉妹もとても好きです。初めは、弟の敵としてユーリを見ていましたがそのうちユーリがヒッタイトで一番心を許せる人になります。特に三姉妹の双子が可愛くて好きでした。また、カイルの側近であるイル・バーニもとても良いキャラでした。クールでかっこいいキャラかとおもっていましたが、意外と情にもろく熱い部分もあります。特に、ユーリからの書簡を守るために様々な策略を練るシーンは、イル・バーニの文官としてのプライドをみることができ、とてもかっこいいシーンでした。ユーリの側近では、三姉妹の他にもウルスラがとても好きでした。ウルスラの登場シーンでは、こんなに彼女のことが好きになるとは思いませんでした。はじめはユーリをだまそうとしたウルスラもユーリのやさしさに触れ、自分の幸せよりもユーリとカイルが国を治めることを望むシーンは涙なしでは読むことができません。
作品全体にオリエントの空気が十分に感じられ、SFファンタジーが好きな人には絶対におすすめできる作品です。背景や衣装まで丁寧に描かれており、ストーリーだけでなく絵でも楽しむことができます。壮大なストーリーであるにも関わらず、矛盾なく最後まで楽しむことができる少女漫画です。


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