木下兄妹は止まらない　最終回 / 結末

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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『それは』

『生まれて初めての』

『官能的な体験だった』

「お疲れ様です！」

「ブッキングの件 主催者さんと連絡つきました？」

「はい！」

「じゃあ私はこれから 新規のアーティストと会ってきますね！」

「環奈～」

「エミリ」

「どう？」

「クラシック系 音楽事務所は もう慣れた？」

「うん！」

「おかげさまで 毎日充実してる！」

「正直 クラシック音楽のよさはまだ わかんないけどね…」

「あんた ずっと ロックバンドのマネージャーやってたんだもんね」

「でも この仕事… 好きじゃないと なかなか続かないよ」

「うち 給料高いわけでもないし　　休みもろくに ないしさー」

「忙しいのは むしろ ありがたいよ…」

「余計なこと考えなくて すむから…」

「もしかして」

「まだ引きずってんの…？ 元彼のこと？」

「う…」

「あんたねえ… 自分から体の関係 拒否ったんでしょー」

「そんなに後悔するなら さっさとＯＫすりゃよかったじゃん！」

「だ…」

「だって…」

「やっぱりまだ どうしても…」

「心の準備が…」

「橘環奈さん…」

「あんた 今いくつ…？　　１６歳…？」

「いえ…　　２６ですけど…」

「やれやれ… もういい加減 覚悟決めなさいよ」

「下手したら一生 貞操守りとおすはめになるよー」

「ううっ… …だって…」

「なんかどうしても無理で～～…」

「結局さ…」

「あんたは その彼のこと　　そこまで好きじゃなかったんだよ」

「だって 本気で好きなら」

「自然と体が「したい」って思うはずだもん」

「そ…　　そういうもん？」

「ほら…　　良い音楽聞くと 勝手に鳥肌 立つでしょ？」

「あれと同じよ」

「頭より先に 体が反応しちゃう」

「それが「本当の好き」ってもんじゃない？」

『本当の…』

『…好き』

〔環奈さ〕

〔ホントに俺のこと 好きなわけ？〕

『そっか…』

『私 彼のこと…』

『本気なわけじゃなかったのかな…』

（なのに 付き合うのＯＫするなんて　　ひどいことしちゃったな）

『でも そもそも「本当の好き」って なんだろう？』

（頭より先に 体が反応…？　　音楽を聴いて 鳥肌？）

『そんな経験したこと ないんだけど…』

『もしかして私　　普通じゃない？』

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