クレイモア CLAYMORE、最終話 完結27巻 感想
※ネタバレ注意です※
『クレイモア』は八木教広作の美しい半人半妖の女戦士達が、人間を捕食する妖魔と戦うという衝撃的な内容のダークファンタジーです。
最終エピソードは主人公クレアと宿敵プリシラの最終決戦ですが、単純な主人公vs宿敵の戦闘シーンで終わりではなく、クレアと相反するキャラクターのプリシラ二人の内面をしっかりと描いており、読み応えのあるエピソードとなっています。
この宿敵プリシラが非常に強く、どんなに強い戦士や覚醒者(戦士の限界を超えて、"捕食者"側になってしまった元戦士のこと)も全く歯が立ちません。
元々プリシラも家族を妖魔に奪われてしまった一人の少女であり、自分が追いやられてしまった境遇を誰かのせいにしないと自分を保つことができなかった被害者でした。
妖魔を強く憎むことで自分を保ち、強くなっていったプリシラにとって自分の所属する組織は絶対的なものでした。
そして組織の命令も絶対遂行しなければならないもの。
そんな彼女にとって人間時代のクレアの命を救い、組織を離反してクレアと共に生きていこうとしたテレサも憎まねばならないものとして、憎悪の対象となってしまったのでした。
そして覚醒したその手でテレサを倒し、最強最悪の覚醒者プリシラは誕生したのです。
そのプリシラに対し、テレサの血肉を使って半人半妖の戦士となったクレア。
命の恩人を目の前で失った彼女は、敵討ちをする為だけに戦ってきました。
しかしその過程で、弱虫で殻に閉じこもっていたかつての自分に姿を重ねる少年ラキを助け、厳しい戦いを戦い抜くことで、信頼し合い、共に戦う仲間ができます。
一人で孤独だった少女はもう一人ではなくなり、自分を支えてくれた人たちがいるからこそ、強くなれるということに気がつきます。
そして彼女と共にあるたくさんの魂とともに強敵に立ち向かい、その中で自分の中のテレサを覚醒させ、プリシラと戦うのです。
印象的なのがこの二人の描かれ方です。
家族を妖魔に奪われてからずっと、悪夢から目覚められないでいるようなか感覚に囚われ、仲間がたくさんいる組織に属してからもどこか孤独であり、覚醒者になってからは絶対的な強さをもつ怪物として描かれるプリシラ。
彼女は家族を失ってからずっと怒りを抱え、ずっと孤独だったのです。
一方で家族を妖魔に奪われた挙句、妖魔に連れ回され暴力を受けていた過去を持つクレア。
この妖魔のせいで話すことが出来なかった少女クレアは、テレサに命を救われて言葉を取り戻します。
テレサ亡き後 も度重なる苦難を乗り越えて、強さを手に入れ、彼女の周りにはかけがえのない仲間が側にいるようになります。
家族や仲間を失いながらも、クレアは孤独に押しつぶされなかったのです。
圧倒的な力を持つ孤独な怪物プリシラの心を救い倒したのは、弱い自分を受け入れ、自分を変えるために厳しい修行を行い、常に仲間とともにあったクレアだったというのもこのキャラクターたちの性質を際立たせています。
強大な怪物として描かれ続けていたプリシラが、最後に穏やかな表情をして倒されていったことも、クレアの力がプリシラを上回ったことを表すのに相応しい描かれ方ではないでしょうか。
人間を捕食する妖魔と戦う女戦士の話から、様々な物語が加わり、壮大なダークファンタジーとなったこの漫画。
どんなふうに宿敵との戦いを終わらせて、物語に幕を降ろすのだろうと思っていましたが、伏線もきちんと回収し、非常に上手く話を終わらせたなと感じます。
宿敵との戦いが終わって物語もおしまいではなく、クレアが強くなったキッカケの一人である元戦士イレーネへ"餞別"として借りていた片腕を返しに行くところで物語が終わるのも、読者がその後のやりとりを色々想像できる、良い終わらせ方です。