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ヴァンパイア騎士、最終話 完結19巻 感想
※ネタバレ注意です※
純血種の親金、枢様が自らの心臓を取り出そうとしているシーンからのスタートです。
思ってた通りと言えばそうなのですが、なんともあっけなく自分の命を炉に投げてしまうところは儚く美しい、そして枢様の覚悟がうかがえました。
直後に追いかけてきたのは、優姫と零です。
その時には、枢様の心臓は既に炉の中で溶け始め、救い出すことは不可能でした。
優姫を悲しませたくないと、ともに誓っていた枢と零です。
こういう展開は、優姫と零にとっては考えられなかったと思います。
優姫が「私がいなければ、あなたの今はきっともっと違ったのに」と枢に放ったシーンは、特に私自身も刺さるシーンで、結果、優姫は自分自身の存在を凄く責めているのだと、読んでいて痛いくらい伝わってきました。
結果はこうなってしまったのですが、けして不幸せではないと枢様は優姫に伝え感謝を伝えるシーンは、本当に最期の別れなのだと感じました。
枢様は、一度は優姫と生きたいとい気持ちに否定をして、優姫を否定したことがあります。
ですが最期には、お互いを求めあい、純血種らしい愛し方で最期を迎えたのかもしれません。
そして眼を閉じてしまう前に、優姫と零を抱き寄せます。
「二人は一緒にいるべきだ、一緒にいて欲しいんだ」と枢は二人に伝え、儚く命を燃やします。
本当に悲しいですが、命についてとても考えさせられるシーンで、目に焼き付きました。
優姫も零も正直、感情がぐしゃぐしゃで、その場で立ちつくすしかなかったと思います。
ただ新しい武器を作るために燃えていく枢様の心臓を見て、二人は何を感じていたのかは分かりません。
しかし残された優姫を守るため、零は生きていくしかないのでしょう。
枢が優姫と共に生きてくれることを、願っていた零です。ですが、枢はもういません。
零は優姫を真っ直ぐに求め、今度こそ自分の手で優姫を守っていくと伝えるシーンは、1巻から二人の幸せを願っていた読者にとっては、とても感慨深いものです。
本当に幸せになって欲しいと感じました。
しばらくして、枢様が新たな親金となったおかげでしょう。純血種たちとの争いも、終息を迎えました。
ずっとお傍で枢と優姫を見続けてきた藍堂は、枢様の身体をそのままにしておくこともできないので、ヴァンパイアの特殊能力である氷を使って、枢様を保管します。
その後は、凄まじい勢いで月日が流れていき、枢様が親金になってから千年が立ちました。
その頃には零も亡くなっていて、零が使っていたブラッディローズの一部をお墓に置いていきます。
今度は優姫の覚悟がうかがえました。炉の火が落とされる今日、心臓を戻しても、再び枢様が目を開けることはなかったのです。
ですが、人間だった時を過ごしたことがある優姫は、枢様を人間にする方法が一つではないことは知っています。
自らの命をかけて優姫は、枢様を人間にするのです。
その具体的なシーンは描かれてはいなかったのですが、凄く描写が綺麗です。
優姫が望んでいたこと、願っていたことなのです。これは本当に命のお話かと思うくらい、いろいろと考えさせられます。
そして目を覚ました枢様が見たものは、なんだったのでしょうか。
傍にいたのは恐らく、優姫と枢の子どもと、零との間の子どもです。
女の子と、男の子、二人ともなんとなく面影があり、美しさと強さを兼ね備えた瞳をしています。
そして、目覚めたばかりの枢に告げます。
「優姫が人間だった時に見ていた世界を愛する貴方にあげたいの」と。このシーンがあるから、私たち読者も納得するものだと感じました。
このヴァンパイア騎士を愛して、本当に良かったと思いました。
生まれ変わった枢様と優姫、零たちの子どもたちが、今後どうなっていくかは分かりません。
ですが、やっと長い孤独から放たれ、光に手を伸ばすことができる描写は、本当に美しいです。
そして、優姫の分身の蝶々が描かれているところを見ると、どこかで二人は繋がっているのだと感じました。
