君に届け、最終話 完結30巻 感想
※ネタバレ注意です※
「いつか君に届くだろうか」1巻の冒頭のフレーズから始まる最終回。涙なしでは読めませんでした。5回泣いちゃいました。
爽子がついに実家を出る日。北幌からみんながそれぞれの場所へ旅立ちます。
お見送りには唯一実家に残る千鶴が来ました。
高校生って大人か子どもかで言えばもちろん子どもです。
でも声や身長、自分の根っこの部分は変わらないっていう人は多いのではないでしょうか。
その自分を形成する大事な部分の性格も、大人になって振り返ると「変わってないなあ〜」なんて思ったり。
むしろ、「若かったな」と大人と対等な見方をする方が多いと思います。
爽子と千鶴は駅のホームで抱き合って、別れを惜しみます。この姿がとても良いなと思うのです。
大人になってからも、この友情は続くだろうし、絶対味方でいてくれる、お互いを信頼しきっている感じがすごく出ていたひとコマでした。
その前に爽子は家から駅までゴミ拾いをしながら向かいます。
爽子にとってはいつものことです。でも普通ゴミ拾いしながら歩いたりしませんよね?
こんな真っ直ぐでピュアな爽子だからこそ、千鶴、あやね、くるみ、ケント…
たくさんの素敵な仲間が集まってきたのだと思いました。涙が止まりません。
そこに走ってやってきた風早。
千鶴は空気を読んで「急用ができた!」と帰っていきます。
駅のホームで別れを惜しむ2人。毎日顔を合わせていたのに、急に遠い場所での遠距離ですものね。別れ難いですよね。
風早は爽子に、自分のアパートの鍵と手紙を渡します。遠距離恋愛になる2人をつなぐ大事なモノです。
手紙の中にはこんな文がありました。
「距離も時間も きっと次に黒沼の顔を見たらふっとぶよ」
「不確かなことも 黒沼となら楽しめます」
遠距離恋愛って難しいってよく言いますよね。物理的な距離は心の距離、なんてよく言います。
でもこの2人なら大丈夫。なにせ遠距離恋愛で一番問題な「距離」も「時間」も、爽子の顔を見たら吹き飛ぶのですから。
恋愛には「絶対」も「確定」もないですが、その不確かなことが楽しいなんて、相思相愛ですよね。
高校生でこんなことを言える相手に出会える風早、こんな風に思ってもらえる爽子がうらやましいです。
場面は変わって、みんなのその後を描きます。
中でも私が印象的だったのは、風早が野球を始めたことでした。
元々中学時代野球部だった風早。色々あって辞めていたことは描かれていましたが、新天地でまた野球を始めるのです。
別に深い意味はなくて、ただ運動がてらなのかもしれません。それでもいいんです。
でも、嫌いになった野球をまた始めたのには、少なからず爽子の影響があったのではないかと思います。
繰り返しになってしまいますが、人生でここまで影響を与えてくれる人に高校生で出会えたことがうらやましいです。
最後のページは、ヒールを履き大人になった爽子と、少し髪が伸びた風早が、桜の下で抱き合います。見開きです。
このページの文字は「届け」だけです。
他に言葉はいらない、あなたに「届け」られたらそれでいい、といった感じが、熱く、シンプルに胸に突き刺さりました。
人に気持ちを届けるのも難しいですよね。相手にシンプルに伝わらなかったり、そんなつもりで言ったはずじゃなかったのに…なんてこともしばしばあります。
この2人はちゃんと真っ直ぐ届きました。2人にだけではなく、登場人物みんなに、そして読者にも届きました。
タイトル回収といえばそれまでですが、それ以上の人生において大切なものがたくさん詰まっている気がします。
真っ直ぐピュアに生きたからこそ迎えられた、大円団の最終回。
爽子目線でも涙が出ますし、爽子パパママ目線でも、くるみ目線でも、風早目線でも…
何回でも涙を流したくなる素敵な最終回でした。