斉木楠雄のΨ難、最終話 完結26巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話には、興味深く不思議に思う所が2つあります。
1つ目は、落下中の隕石を兄空助が止めようとするシーンです。
超能力を手放した楠雄は、再び超能力に目覚めても、まだなお普通の人として平穏な生活を望もうとします。
そのため、空助は楠雄を頼らずに、父に宇宙服を着せて隕石の衝突を防ごうとします。
母が出てこない所を見ると、母思いの空助は、真っ先に母を安全な所へ保護していたのかもしれません。
超能力は無くても、IQが非常に高く、様々な機械を開発する空助。
十中八九、父の宇宙服は楠雄のやる気を引き出すための演出だと想像できますが、案外空助は楠雄を頼らなくても隕石を処理する方法を考えていたと思われるのです。
ラストは、楠雄がたまたま瞬間移動で帰宅した時に隕石のニュースを知る所となり、超能力者を自覚して隕石に立ち向かうであろうシーンで終わります。
しかし、空助が楠雄の急な帰宅で驚いていた事や、空助の頼みを楠雄が断った時に空助が隕石の落下の件を伏せていた事を考えると、空助にも「楠雄をそっとしてあげたい」という思いがあり、それなりに隕石の対処方法も考えていたと想像できます。
超能力者でない空助のアイディアはどのようなものだったのか?いつか実際に科学的に実現できそうで興味深いです。
2つ目は、楠雄は照橋さんに好意を持ち始めたのではないか?という予感です。
楠雄は超能力を手放した結果透視ができなくなり、隣の席の照橋さんをつい見つめてしまいます。
「調子に乗って見すぎた」とありますが、その人への関心が無ければできないことです。
テレパシーも使えなくなって照橋さんの本心がわからなくなってしまった今、楠雄が照橋さんを好きになるのも時間の問題のように感じました。
超能力が回復してきたにもかかわらず普通の人間でありたいと望む楠雄。
隕石の落下に躊躇している時に、燃堂に始まる数々のクラスメイトのテレパシーを感じるシーンがあります。
「おっふ」と出てくる照橋さんの最後のテレパシーを受けて、楠雄が隕石に向かって動いた時、どんな顔をしていたのかは全くわかりませんが、照橋さんの思いを受けたからこそ決心したようにも感じました。
クラスメイトの中で照橋さんが特別な存在になってきた表れであるかもしれません。
最終話について、他にも思うことが幾つかあります。
冒頭の新学期のクラス替えのシーンでは、日本全体を巻き込む大噴火を楠雄がようやく止めて、時が無事に高校3年生へ進んだことがわかり嬉しくなりました。
海藤と窪谷須の間でさらに友情が深まったり、才虎と照橋さんと楠雄の3人に新たな三角関係のエピソードが生まれたりするかもしれません。
この雰囲気が、最終話を読み終わっても、ファンに楠雄ワールドの終わりを感じさせない秘訣になっていると思います。
超能力を持たない楠雄は、大いに焦ったり驚いたりして表情豊かです。
今までクールで落ち着いた面が多かっただけに親しみを感じます。
高い所にある本がなかなか取れなかった時には、「自力で頑張れ~」と応援したくなりました。
そして、燃堂や窪谷須や鳥束に助けてもらうことで人から守られる事を経験し、「ありがとう」をテレパシーではなく言葉にすることが出来た時は、良かったね、という母のような気持ちで一杯になったので不思議です。
楠雄は再び超能力を取り戻します。最終話には描かれていませんが、確実に隕石の落下を防いでくれたのだと思います。
隕石を粉々にして破片を太平洋の真ん中に落としたのかもしれませんし、ブラックホールまで瞬間移動させたのかもしれません。
そして、これからは人間味が増して、より心温まる数々の活躍をすると確信があります。
もう会えないけれど、涼しい顔立ちが目に浮かんで会いたくなる、それが斉木楠雄なのです。