ヤンキー君とメガネちゃん、最終話 完結23巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話は卒業式で主人公の品川が答辞を読む場面です。
この漫画のテーマである、「楽しい高校生活を送ること」が最終話でとてもよく表れていると思います。
品川はヒロインの花と出会ったことをきっかけに様々なことを経験し成長していきますが、最終巻で品川は残っていたやらなければならないことをすべて完了させています。
第一に花と同じ大学に合格することです。
花は大学に推薦で合格後、家庭の事情で失踪し、品川の前から姿を消してしまうのですが、品川はもう一度花に会えると信じています。
しかしまだ高校生の自分には花が抱えている問題を解決することはできないと気付いており、だからこそ同じ大学に行くことが絶対に必要だと感じていました。
花を探し出すことは自分の役目であり、これからの品川のやるべきことなので、大学に合格したことは将来花と再会できる条件を一つ満たしたことになります。
彼の花への思いの強さが大学合格という形で証明されたと思います。
第二に、ライバルの和泉と決着をつけることです。
和泉と品川は互いに強く意識しあい競いながら共に高校生活を過ごした仲間です。
彼と真正面から喧嘩に挑み、結局勝負は引き分けでしたが、2人の根底にある強い友情を感じました。
第三に、生徒会副会長として卒業式の答辞を読むことです。
生徒会長の花は卒業式間近になっても行方が分からなかったので、品川が代わりに読むことになりました。
花に誘われ嫌々やることになった生徒会の仕事でしたが、仲間たちと協力する楽しさや生徒を引っ張っていく副会長としての責任感など、多くのことを学びました。
生徒会としての最後の仕事である答辞を読むことは、まさに品川にとって高校生活の総括であり締めくくりです。
品川の答辞は「入学して初めての行事社会科見学 そこに突然あの女が現れた あいつのせいで無理やり社会科見学に連れていかれた俺は やりたくもねぇ陶芸や座禅をやらされて あいつの友達づくりの協力をさせられた」と始まり、花との思い出を軸にした彼にしか読めない答辞だと思いました。
そして「あいつのせいで 俺は…」と言葉に詰まったところで、次のページをめくると、見開きいっぱいに品川が涙する場面が描かれていました。
彼の高校生活でやり残したことはなく、充実した日々を過ごせたことの実感が一気に読者に伝わってくるシーンでした。
花がいなくなってしまった時も、大学に合格にした時も泣かなかった彼が、卒業式で初めて涙してしまう姿に感動しました。
「この学校に来てよかった……!!!」と言い終わると温かい拍手に包まれて終わりました。
最終巻でもあまり感動せずさらっと終わってしまう漫画もありますが、「ヤンキー君とメガネちゃん」は最終話に一番の感動のピークを持ってきているので、最後まで読み続けてよかったと思えました。
残り数10ページはエピローグなのですが、社会人となった彼らの様子が描かれていて、彼らの物語は続いていくことが感じられました。
ヒロインの花は元ヤンキーだということを隠して高校に入学してきました。
みつあみに眼鏡をかけまじめな生徒を演じていました。
自分だと気づかれてしまったら周りから怖がられてしまうし、友達もできないと悩んでいた花に自信を与えてくれたのは品川です。
花に振り回されうんざりすることも多々ありましたが、品川にとって花はつまらなかった高校生活を刺激あるものに変えてくれた人です。
学生生活でないと味わえない感覚や人との関係性は、これからの未来につながる要素を秘めていて、こんな青春をしたかったと思う、明るくスッキリした読後感でした。
ギャグ漫画と思って楽しく読むと、最後はこんなに感動させてくれる、良い意味で期待を裏切ってくれる最終話でした。