結末

ぼくの地球を守って 最終回 21巻 ネタバレ注意

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ぼくの地球を守って、最終話 完結21巻 感想

※ネタバレ注意です※

小林倫が東京タワーを利用して月基地の破壊を望み、シオンが月基地のコントロールを望んだ東京タワー爆破事件から四年後、それぞれに起きたしがらみやいがみ合いを抱えながらも平穏な時間がようやく取り戻せました。

倫を含め、異星人の前世を持つ主人公亜梨子たちが、前世の記憶と願望に翻弄されたのは僅か一年ほど。たった一年の間にたくさんの人と知り合い、たくさんの協力を得て、裏切られて、傷ついて、やっとそれぞれが前世と折り合いをつけることができたのが、読んでいて本当に良かったと思えました。

前世の記憶に一番引きずられたのは倫でした。前世の記憶を認識したのが、わずか八歳の時だったから余計に前世の記憶に強く引きずられてしまったのかなと思っていたのですが、年齢だけではなく、前世のシオンという人間の記憶があまりに強い願望を抱いていたからなんだということが最終話でも描かれています。

戦争によって実の家族を失い、保護された先でも家族になろうとした人達を事故で失い、そして大きな星間戦争で故郷の惑星すらも失った倫の前世であるシオンは、戦争に強い憎しみを持ち、人を信じることができずにいました。生まれてから死ぬまで、シオンに平穏だった時が一体どれほど僅かな時間だったのかと思うと、倫がその強烈な記憶のイメージにいつまでも引きずられてしまうのもわかります。

そんな倫は前世は前世と折り合いをつけたようなセリフを言いますが、それに付け加えるように「いつかこの先、俺はまた狂い出して、ありすを泣かすのかな」と締めくくっています。今だに倫の中で前世シオンの存在と記憶は強く残り、未だに倫を苦しめ続けていることの表現なのだろうなと思うと、倫とシオン二人の苦しみがとても痛々しく、胸が締め付けられます。

二人とも、ただ大切な人を守りたいという気持ちが根底にあるのに、その願いを歪ませてしまうほどの失う恐怖も知っているからこそ、倫とシオンはまだまだ苦しみを脱することができないのだろうなと思わせます。

それを知るのは亜梨子一人なのかもしれませんが、同じ前世の記憶を持つ五人は地球人としての現世を生きながらも、必ず倫も亜梨子も助けてくれる強い味方であることが嬉しい結末になりました。

最初はただの恋敵だったり、記憶を共有する仲間という不思議な関係性なだけだったはずが、いつの間にか前世に引きずられていった高校生と一人の小学生の物語が、こうして平穏なエンディングを迎えることができて、温かな涙が出る思いです。

意外な結果に終わったと思ったのは、一成と桜が婚約したとなったことには驚きました。前世では女同士で親友だった二人ですが、現世では一成は同級生で男同士、前世での想い人である迅八を未だに片思い継続していました。桜も前世から一成の片思いを見守り続け、現世では性別が願いとおりに代わってしまった一成の一途すぎる片思いを叱咤していました。そんな二人は現世では男女ですが、どこか前世と同じような親友のように描かれていて、恋愛関係に発展しそうにないと思っていました。

片思いにケリがつけられたのか、中世的な雰囲気を持っていた一成の雰囲気はだんだん男らしく変化していったようです。最終話でそんな一文があっただけなので、具体的にどう変化したのかは不明でした。

その変化に桜が恋をしたようで、なんとなく身内で綺麗にまとまっていくのかなと思わせる結末になりました。

それぞれが同じ辛い前世の記憶を共有しながらも、現世とちゃんと生きていこうと前を向いた彼らの精神的な成長と心の強さに感動です。そして、地平線いっぱいに広がる麦畑や海、どこか切なく郷愁を思わせる風景と詩的なセリフが混ざり合い、自分のことでもないのに、自分のことのように思わせる力のある作品でした。


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