LOVe、最終話 完結30巻 感想
※ネタバレ注意です※
前作「B.B」の主人公の一人娘、高樹愛ちゃんの物語です。
父親はボクシングで世界を獲りましたが、その娘はテニスで世界を目指しました。
一話で宇宙に行く父親と離れ、父の親友「マジシャン」と小笠原にやってきました。
そこで出会ったのは、テニスが大好きな少年「鯨岡洋平」でした。
彼ともう一度会う為、そして今度こそ勝つ為に、男子校「黒百合学園」に性別と年齢を偽って入学した、愛ちゃん。
本当は13歳の女の子なので、筋力や体力、身長などのハンデがありながら、メキメキと実力をつけていきます。
事実を知っているのは、顧問のミドリ先生やコーチなど、一部の人だけ。
生理や体力差など、人に言えない辛さがたくさん……。
そしてことあるごとに、性別がバレそうになる危機!
ハラハラしながら、頑張る愛ちゃんを応援してきました。
終盤で性別を暴露する記事が出たり、深刻な危機を越えた彼女は、とうとう追い続けた洋平と、コートで再会しました。
しかも、女の子として、スコート姿で。
それはライバルやチームメイトを始め、たくさんの人の心を動かしたからです。
愛ちゃん自身の、ひたむきな戦いぶりが……。
長い長い時間を経て、再戦した洋平には負けてしまいましたが……今度は女子テニスプレイヤーとして、新たなスタートを切りました。
個人的に、父親であるリョウとの再会を楽しみにしていましたが……愛娘の試合を観た父親は、声をかけずに去ります。
娘が自分の道を見つけたように、父親もまだ何かの挑戦の途中なのでしょうね。
ともあれリョウと森山、加藤にマジシャンと、前作の中心人物が登場したのは嬉しいサプライズでした。
一話では、まだまだお父さん大好きな女の子だった愛ちゃん。
凄いお父さんと世界中を廻り、はっきり言ってもの凄いファザコンでした。
そんな彼女が出会った目標・洋平。
私は彼は愛ちゃんにとって、ライバル兼気になる異性だと思ったのですが……最終回で、どうやら父さんを重ねていたらしいことが分かりました。
正直、これは意外でした。まだまだ彼女は、ファザコンだったのですね……。
しかし洋平だけではなく、チームメイトの瀬川継や漣先輩など、たくさんの異性に想いを寄せられる愛ちゃん。
彼女は将来、誰と結ばれるのでしょうか。
最終回で愛ちゃんは成長し、女子テニスの世界ランキングを駆け上がります。
そしてウィンブルドンを最後に、姿を消し……皆は「父親と対等になり、彼を追ったのだろう」と話し合います。
しかし一番驚いたのが、駆け足で語られた後日談。
なんと怪我でテニスを辞めた瀬川は医師になり、赴任先の海外で偶然、成長した「ラブ公」こと愛ちゃんと再会しました。
昔から愛ちゃんに想いを寄せていた、瀬川継。
当時は気付かなかった愛ちゃんにも、今度はちゃんと気持ちが届いたようです。
二人は結婚し、男の子を設けましたが……なんと瀬川は地雷を踏み、亡くなるという衝撃の「ナレ死」!
気の毒過ぎて、メチャクチャ泣きました。
優しくて一本気で純情で、瀬川継がけっこう好きだったのに……。
そして数年後、結婚後に離婚した洋平は、船の中で娘を探していました。
かつての自分のように、揺れる船で壁打ちをしている娘。
しかし彼女は、見知らぬ少年と一緒でした。
上手に壁打ちする彼は、「うちの母ちゃんも、昔やったんだって」と語ります。
驚く洋平に「それ、面白い?」と話しかけた、妙齢の女性。
彼女が誰かは、もう書かなくても分かりますよね。
一話の出会いをなぞるかのような、二人の再会。
これは最初から最後まで、「愛ちゃんと洋平の物語」だったのですね。
それにしてもリョウといい、愛ちゃんといい……父娘揃って、伴侶と早く死に別れる運命なのは、泣けますね。