この作品は小野つばさが憧れの白翔高校吹奏楽部に入部して、初心者ながら毎日厳しい練習を頑張り、仲間との絆も深まるといったストーリーです。
第9巻では、つばさが思いを寄せるクラスメートで野球部員の山田大介が部活中にケガをして、病院に入院するという出来事がありました。
診断結果は足首の骨折で、医師からリハビリが必要になると言われていました。高校に入学して以来、1年生ながらキャッチャーとして期待されていた大介だけに、部活ができなくなったり、復帰してもまた元通りに野球をできるのかわからなかったりと、その心中が思いやられます。
つばさが部活の後病院に駆けつけるのですが、大介は無理した笑顔でつばさを出迎えます。
つばさはそんな大介に、「大介くんの後ろに甲子園が見えるよ!」と言って涙を流します。
そこで大介がつばさを抱きしめる、これがまさに第9巻のハイライトシーンでしょう。読んでいて胸が熱くなりました。
大介はいつも笑顔なのですが、やはり内心ではケガをして辛いだろうとつばさは考えます。
そこで同じ吹奏楽部の3年生の先輩に話を聞いて、「私もケガした特、辛かったよ。なんで私だけ?って思ったり。最初のうちは気持ちを強く持つんだけど、そのうち気持ちだけじゃやってられなくなるんだよね」と経験談を語ってくれました。
この先輩が腱鞘炎になってレギュラーに選ばれなくなったくだりが以前の巻に掲載されていますが、この辺りも読んでいてハラハラしました。
つばさはなんとか大介を励まそうと、吹奏楽部のメンバーで曲を演奏して、それをCDに録音して大介に渡そうと考えます。
つばさを目の敵にしている2年生の先輩に色々言われたりしながらも、最終的には顧問の先生の了解を得て、吹奏楽部員全員で合奏した曲を録音することに決まりました。
吹奏楽部で練習してる時、野球部が頑張ってるのも教室から見えるよね、とその時の先生の言葉も印象に残っています。
CDが大介の手に届いた後日、松葉杖をついた大介が教室までやってきて、吹奏楽部員全員の前でCDのお礼を言うシーンがありました。
その時の大介がカッコよかったです。礼儀正しくお礼をして、まさしく部活漫画というのか、爽やかでとてもよかったです。
そしてこの巻のラストでは、先の展開を考えると少し心配になる出来事が起きます。
吹奏楽部の3年生の先輩が部活を引退し、引き継ぎが行われるシーンです。
つばさは、なぜか自分を目の敵にしている2年生の香織先輩が、トランペットパートのリーダーになったら嫌だな、と考えていたら、トランペットのパーリー(パートのリーダー)には、つばさと同級生の水島という男子生徒が選ばれたのです。
1年生がパーリーになることは、白翔高校吹奏楽部でも前代未聞のようで、水島はかなりトランペットの実力があるのですが、その時の部員たちのざわめきにも臨場感がありました。
パーリーに選ばれなかった時の香織先輩の悔しそうな表情といい、2年生の先輩にも物怖じしない水島の態度といい、これからどうなるのかドキドキして第9巻は終わります。