私たちが恋する理由　最新話 / 35話

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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『あたしのウチは 社宅です。』

〈しゃ-たく【社宅】　社員やその家族を住まわすために 会社が所有し管理する住宅。　小学館「大辞泉」より〉

「いってきまぁ――す！」

「あ 初ちゃん おーねが――いっっ ゴミ出し当番代わってっ」

「ハイ！？ 何ゆってんの！？」

「今日はアカちんの番でしょ！？」

「お願い―― 今日 カレシと待ちあわせしてんの――」

「ゴミ室なんて よってったら 遅れちゃうー」

「しかもなんかー 今日キブン悪くて 臭いとこ入りたくない――　　お願い お願い おーねがい――」

「…あ―― も――う わかったよ…」

「わっ♡♡ 初ちゃん 大スキー♡」

「初―― ちゃんとキレーに分けて出してよ――　　橘さんの奥さん そーいうのすごく うるさいんだから！」

「ま… 万いち…　　ゴキゲン損ねたりしたら お父さんが…… どこへトバされるか…」

「はいはいはいはい」

「すごい荷物じゃん」

「なんで そんな あんの」

「え――… 体育あるし あと辞書と…　　友達に貸すＣＤとマンガと―― え――と…」

「そんなんじゃゴミまで持てねーよ 俺 行ってやるから お前持たなくていいよ」

「へ――きっ」

「テスト明け休みなんだから ゆっくり寝てて お兄ちゃんは」

「んじゃー 行ってくるっす―――」

《バタン》

「ったく…」

「ふ――― 重かった――」

《バン！》

「あっ 成田っ」

「燃えないゴミ 今日まだ収集してないよねっっ！？」

「へ！？ どしたの すばる」

「姉ちゃんが勝手に捨てちゃったんだよ～～～ ない！ ないよっっ　　オレのガン○ムっっ パーフェクトグレードっ 夏休み中かけて作ったのにいいいっ」

『八木すばるは　同じＡ棟のコで 幼なじみ 高校(ガッコ)も同じだ』

「ちょっと ヤバイよ そんなに ちらかしちゃ…」

「ちょっと！！ あなた方」

《ビクウ！》

「そんなところ探って 何してらっしゃるの！　　片付けなさい！！ そんなに散らかして……」

「あっ…ち……ちが… す…すいません…」

「おは…おはよ――ございます」

「橘さん」

「まさか　　何か持ち出すおつもりじゃないでしょうね」

「違います！ 探しものしてて…」

「そうよねええ いくらなんでも そんな あさましいこと！　　我が社のご家族がなさることじゃありませんわよね」

「ねーえ みなさん！」

「橘さんのおっしゃる通りです！」

『このおばさんは　　ここの「東菱商事東ヶ丘社宅』で１番のお偉いさんの奥さんで』

『Ａ・Ｂ・Ｃ棟3棟から成る この社宅の主婦たちの頂点に君臨する』

『絶対君主(エリザベス女王)なのだ』

「成田さんのお宅は… ああ！　　お父様 営業三課の まだ係長でいらしたわね」

「ご家族も多くて 大変でいらっしゃるから リサイクルして 節約してらっしゃるのかと思って　　そんなこと ないですわよねえ」

《ムッカアア》

『くっそおお… ガマン ガマン　　ガマンだ』

「す…すみませんでした…　　ちゃんと片付けしますから」

「わかれば よろしいのよ！ ホホ」

「ここの品位が損なわれるようなことは　　つつしんで頂きたいわ」

「特に 八木くん　　あなた 一応 うちの亮輝さんのお友達なんですから！」

《ビクッ》

『亮輝……』

《くらっ》

「あ…… じゃあ あたし…」

「学校 遅れちゃうんで しつれ――します……」

「いってらっしゃい！」

「成田」

「どした？ 大丈夫？」

「ゴメンな オレのせいで」

《ふる ふる》

「え？ 違うの？」

「…成田 もしかして」

「まだ リョー君のこと怖いの？」

〔おい お前〕

〔なんでここに いんだよ〕

〔どけ　　ここは おれが遊ぶとこなんだよ〕

〔どけ！〕

〔痛いよ…　お…かあ…さん　　痛いよ―――…〕

〔痛……〕

『名前聞くだけで』

「…あたし あんトキ」

「死ぬかと思ったんだからね」

『ぞっとする』

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