BLACK BIRD、最終話 完結18巻 感想
※ネタバレ注意です※
妖と人間という異種族間の恋愛を描いたお話ですが、主人公は『子供を産むと同時に命を落としてしまう』という悲しい運命に苦しみながらも、なんとかそれに抗おうと、恋人と共に最後まで生きることを諦めずに強く生きていこうとします。
最終話の一話前では、主人公の生死が分からないまま話が終わってしまいます。
ですから最終話ではそのことが一番の気掛かりとなります。
ですが、前回の話の数年後から話が始まり、主人公の息子の元気な姿は描かれているのですが、中盤くらいまでは肝心の主人公が生きているのか、それとも死んでしまったのか、そのことがわからずに期待と不安でヤキモキしながら読み進めていくことになります。
『生きていてほしい!』という読者の想いが最高潮に達したころに、元気な主人公の姿が伴侶となった恋人と共に見開きいっぱいに現れ、無事生きていたことが明かされます。
このシーンを見た瞬間の感動と安堵の気持ちは忘れられません。
『生れてくる子供に想いを託して主人公は逝ってしまう』なんて終わり方は悲しすぎると思いながらも、最悪のラストを想像しなかったわけではなかったので、『生きていてくれてよかった』と何度読み返しても胸が熱くなるシーンでした。
そのシーンを挟んで、そこに至るまでの経緯が描かれているのですが、主人公とその恋人を取り巻くたくさんの人たちが、二人の幸せを願い、奇跡が起こることを最後まで諦めずに信じ、支え続ける姿にまた胸が熱くなります。
そのシーンは、主人公を側で支える一人の視点で描かれているのですが、主人公が倒れてしまう前の数日を思い出し、生きることを諦めていなかった、自分が死んでしまうなんてことは全く考えていなかった主人公の姿に『諦めてはいけない!』と自らの気持ちを奮い立たせます。
その登場人物が子供なので、『悲しい』『寂しい』『嫌だ』そういった気持ちがよりストレートに描かれているところがまた涙を誘います。
主人公が倒れてから三日間、妖である恋人はエナジーを送り続けて蘇生を試み、なんとか無事に意識を取り戻します。
そのシーンでは、その場にいた全員が激しく涙を流す姿が描かれているのですが、文字としては一文字も皆の声が書かれていないのです。
それなのに登場人物たちの激しい泣き声が聞こえてくるようなシーンに身震いしました。
その後、主人公がなぜ生き延びることが出来たのかがきちんと説明されているのですが、ファンタジーでありながら、ただの奇跡で終わらせないところがまた話に奥深さを与えているようにも思います。
終盤では主人公たちに関わった人たちが一堂に会し、その息子の誕生日を祝うシーンが描かれています。
登場人物たちの近況がうかがえるシーンもあり、皆のその後がわかるのは読者としては嬉しい展開でした。
終盤に大きな盛り上がりはないのですが、何気ない平和な時間が、数々の苦難を乗り越えたからこそある幸せな時間であることを、より鮮明にしている素敵なラストでした。
涙を流さずには読めない最終話だったのですが、その感動を後押ししているのが主人公の恋人です!
とにかくカッコイイ。妖という設定も相まって色っぽいんです。
服装もほとんどが着物姿で、女性もそうですが着物姿の男性って艶っぽくて素敵です。
幼いころから主人公を一途に想い続け、主人公の命を守るために一時は自らとの子供を殺そうとまで考えます。
そこまで愛した主人公が出産後息絶えてしまい、蘇生させるために、どんなに見苦しくても足掻き、最後の最後まで諦めない姿は、悲しいシーンであるにも関わらず艶めかしく美しいシーンにすら見えました。
主人公の生存がわかり涙し、最後には皆の幸せなその後が描かれる素晴らしい最終話でした。