天使なんかじゃない、最終話 完結8巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話は卒業式の朝から始まっています。
新設した学校の第1期生で入学した生徒たちの初めての卒業式。
本作の主人公である「冴島翠」は、明るくて人気者で、おしゃれで作品の中でもいろんな髪型をしてきました。私も読んでいた当時はまだ小学生でしたが、服装や髪型に憧れを抱いていました。
そんな翠は卒業式は久しぶりに髪を下ろして、念入りにブローしたストレート。最終話の前の話が夏のお話で、その時より髪が伸びていたので、髪型ひとつでも時間の流れを感じられました。
ちょうど入学から卒業まで3年分が描かれている作品。友達との悩みや、恋の悩み、大人になる不安など様々な模様が描かれていました。
秀才で家もお金持ちで、人付き合いが苦手で無愛想な「マミリン」が、生徒会に入り、翠と仲良くなるにつれどんどん変わっていきます。表情もそうですが、服装や髪型も翠に影響されてどんどん可愛くなっていきます。そのマミリンが卒業式当日、自分から翠を迎えに行きます。
卒業式当日、翠は答辞を言います。
通常は事前に文章を考えるものですが、翠はその場に立った時の気持ちを伝えたいと白紙で臨みました。そのわがままを聞いてくれた先生の一人が生徒会の顧問である足立先生。この足立先生もいいキャラクターをしていて、適当に見えますが実は生徒思いのいい先生でした。
翠は最後ということに実感がなく、どう気持ちを伝えていいか言葉に詰まります。その姿に翠を慕っていた後輩のひとり、マコちゃんを筆頭に声援を受けます。その時点で生徒会の仲間や後輩たちは涙目で、私の涙腺も崩壊寸前でした。
声援であふれる講堂の中、もう一人の主人公である「須藤晃」、翠の彼氏でもありますが、晃が「がんばれ」と声をかけます。
翠は3年間の感謝の気持ちを笑顔で「ありがとう」と深くお辞儀をします。その瞬間、同級生や後輩たちは声をあげて泣きます。
人前では素直に涙を流さなかったマミリンも同じく。答辞を終えた翠を晃は優しく迎えます。その姿に私の涙腺も崩壊しました。
これまでずっとずっと翠の片思いで、頑張ってやっと両想いになったと思えば、気持ちのすれ違いや、誤解で一度ダメになってしまいます。それでもお互いの大切さがわかりやっとなんの障害もなく二人でいられるようになったんです。その上でのこの卒業式はとても感動的でした。
たくさんの登場人物が出てきますが、それぞれみんながハッピーエンドで終わります。最終話で全てハッピーエンドはつまらないという人もあると思いますが、この作品に関しては誰も文句のないハッピーエンドだと思います。
たくさんの登場人物が出てきますが、それぞれ事情や悩みを抱え障害を乗り越えてきました。ひとつひとつがちゃんと回収されていて、どの人物も幸せな最終回です。
最終話の最後数ページでは、卒業した学園の入学式の模様が描かれています。そこに新任の先生として紹介されたのは美術の先生として赴任した翠です。
読者としては結婚して「須藤翠」となっているのを期待したんですが、名前まもとのまま「冴島翠」でした。ただ翠の左手には18歳の誕生日に晃からもらった指輪と、首には天使の羽のネックレス。晃の姿こそありませんでしたが、それだけでも二人が順調だということがわかり、嬉しく思いました。
小さな文字でしたが、「冴島先生はK女子美を卒業」というセリフがあります。この1文にも、翠は卒業後の進路に悩み、他の友達よりも受験に取り掛かるのが遅く、不安を抱えていました。それが希望の大学に受かり、無事卒業したことがわかります。
それだけでも読者としてはとても嬉しかったです。
その姿を欠伸をしながらでも微笑んで見守る足立先生も健在です。
全てのキャラクターに感情移入できる今でも大好きな作品です。