女王の花、最終話 完結15巻 感想
※ネタバレ注意です※
女王の花の最終話は、主人公である亜姫の半生が早いピッチで展開されました。
亜姫が亜国の女王に即位し、そしていなくまるまでが1話に凝縮されています。
女王としての活躍をじっくりと読んでみたかったのですが、この最終話の展開には意味があるんだと今では思います。
その証拠に女王に即位してからの亜姫の顔は、一切描かれていません。
亜姫なら、年をとっても美しいんだろうなと想像はできるんですが、話の流れからでしか表情が推察できません。
ある意味、想像力が必要な一話でした。
最終話の話の展開が急ピッチだったもう1つの理由は、亜姫と結ばれるはずだった薄星が、女王即位前にいなくなったからではないでしょうか。
薄星は最終回の手前で、亜姫を守るためにたくさんの敵と戦い続け、力尽きて川の中に沈んでしまいました。
つまり、愛する人がいなくなってからの女王即位になったのです。
薄星とともに過ごすことが叶わなくなり、それを経てからの即位だったから、ある意味、それまでの女性としての人生とはまるっきり違うことを強調するためだったのかもしれません。
最終話は、淡々と時系列の順番でストーリーが展開されるのではなく、亜姫が春琴という宮女(侍女)と胡人の商人・蛇波流の息子によって殺害されたとされ、二人が宮廷で捕らえられるところから始まります。
「千年の花」と呼ばれる眠草を亜姫に飲ませ、毒殺しようとした疑いがかかっていたのです。
亜国宰相・高登の前に引きだされた二人は、なぜそのようなことをしたのかと詰問され、春琴が亜姫のことを語るところから、女王になってからの亜姫のことが語られます。
過去と未来が前後する流れで、最後は未来の話に戻るという演出ですが、それにも大事な理由がありそうです。
この演出には、亜姫自身の目線で最終話を展開するのではなく、侍女という女王・亜姫のそばで長年使えていた人間の目線で展開させ、ヒロインを客観的に描く意図があったのかもしれません。
最終話、ヒーローである薄星の姿が見えなくなって、ただ一人老いていき、女王の仕事に忙殺され、激務で身体を壊していく様子はとても悲しくも見えました。
亜国の国民みんなから愛された女王は、何度か自分の後継者を選ぼうとしても、愛されるがあまり、在位しつづけざるをえなかったのです。
そして、愛する人・薄星を心の奥底で待ち続け、曾国の王が求婚してきても、まったくなびかず独り身を貫き通しました。1人で寂しくこの世を去ろうとするヒロインを見るのは、とても切なく、後味の悪いものがありました。
しかも、主人公が年老いて毒殺されて消えるなんて、やるせなさが半端ありません。
でも真相は、亜姫が毒殺されるのではなく、自分が女王としてではなく、1人の女性として死ぬためにそうなったのです。
そのために「千年の花」を望み、探しつづけ、それを蛇波流の息子から手に入れ、女王である自分から解放されたのです。
それどころか女王は寝台から煙のように消えてしまったこともあり、二人は罪を赦されました。
女王・亜姫が消える前、寝台で眠りに落ちていた亜姫は花の香りと、窓から入ってくる風や光を心地よいと感じていました。
そうすると愛しい薄星が迎えにきて、いつの間にか少女の姿に戻った亜姫が二人で旅立って行きました。
女王としての半生は女性としての幸せもなく、女王の任務に追われて仕事に人生を捧げた状態でしたが、ラストは愛する人と再会し、女王としての責務からも解放されて、本当によかったと思いました。
とにかく想像力が必要だし、見る人によってはこの最終話の解釈が違うであろうと思います。
女王がいなくなった亜国がどうなるか心配ではありましたが、その後もちゃんと国として繁栄していることがわかっています。
ハンカチが必要な感動する最終話でしたが、だれも不幸で終わらない話で感無量でした。