鋼鉄の華っ柱、最終話 完結9巻 感想
※ネタバレ注意です※
頭脳も高くてスポーツも出来て完璧な王子様キャラの真道（さねみち）は最後まで王子様でした。
戦いが終わってのほほんとした日常に戻り、蘭子（らんこ）と朝涼（あさすず）の女子二人は真道を取り合って火花を散らすと言うことは無く、ただ一つの賭けに出ました。こういういがみ合う事無く、お互いの好きを押し付けたりせず、相手を尊重できる友情っていいよねと思ってしまう二人です。
賭けとして朝涼は、フランスに料理の勉強をしに行くと言うのです。真道は取り乱す事無く、驚きつつも落ち着いています。しかし、弟の夏野（なつの）は朝涼にいなくなって欲しくないと駄々をこねるのはやっぱり夏野らしいなと、姉弟の仲の良さを改めて見れてほっこりします。
次の日、断固反対と喚いている夏野と比べて真道はやっぱり落ち着いています。そのため、夏野は「お姉ちゃんが好きなはずなのに、なぜそんなに落ち着いてられるのか」苛立っています。シスコンではあるけれど何だか可愛らしい弟だなぁと思ってしまいます。
真道は屋上へ朝涼を呼びます。そして、何の前置きも、ムードも無いまま、真道は朝涼が「好きなようだ」と告白します。朝涼はずっと兄弟の様に思って育ってきたと言っていたので、「実道を好きだけど、そういう好きではない」と言って、困った顔をしています。
が、さすが、王子様と言った所でしょうか。
「いや、君は僕が好きなハズだ」
と断言します。ものすごく自信満々です。真道のこの自信満々さは分かりきっていましたが、やっぱり、自信満々の傲慢さ。さすが、本のタイトル通りに鋼鉄の華っ柱を持った男です。これで、どん引きな気分にならないのがこの男のすごい所です。むしろ、こう言いきれる精神は清清しくて憧れます。
しかし、朝涼も断固断ります。「私はアナタを弟以外に見た事が無いから」と。この言葉には一瞬、真道も呆然とした様子になります。ついに鋼鉄の華っ柱を持った男も揺れるのか・・・！？
しかし、朝涼は、なぜこんなひどい事を言っているのだろうと逡巡とし始めます。最終的には、自分が弱くて怖いから断っている事に気づきます。真道にもっと前に進んで欲しいと言う気持を持っているからこそ、真道の気持に答えたくない。だから、「私は、弱い人間なんだからね」とスッキリした様な表情で言うシーンは朝涼が綺麗に見えます。
「だけど僕は君が好きだよ」
と何の迷いも、飾った言葉も無く伝える真道はさすがです。これは、かっこいいです。弱い所も受け入れてしまう、器の大きさがはっきりと現れています。
そんな真道の言葉に、朝涼は泣いてしまいます。いい所も悪いところも含めて、自分の全部が受け入れられていると分かればそれは、安心します。女としてうれしいです。そして、本当はフランスに行く予定などは無かった事、これは蘭子との賭けだった事を明かします。
蘭子は、朝涼を選んだ真道に少し泣きそうな表情になりがらも、好きな気持を諦める事を伝えます。少し切ない気分になります。蘭子は、真道にキスを求めます。真道はそれに答えるのかなと言うそぶりをします。しかし、蘭子はそれを止めます。
これで、蘭子が止めなかったら、蘭子と真道の印象は悪くなっていました。が、真道も蘭子が止める事に気づいていたのでしょうか。そのあたりの事は、よく分かりませんが、キスは無く、ほっとしました。
こうして蘭子はきっぱりと真道を諦めたかと思いきや、どうやら、諦めていないようで、真道の会社に現れ、「愛人でもいいんですよー」と笑顔で言いのけています。この子も中々の鋼鉄の心を持っているようです。
そんな様子をのほほんと見ている朝涼もなんだかんだ強い心の女だなと感心してしまいます。
エグイなーなんて思うストーリーもあったり、馬鹿馬鹿しくて拍子抜けする所もあったりと、メリハリがあって面白い作品でした。最後はすっきりと終わって気分がいいです。
