「君に届け」の10巻に収録されたお話は、本作品の中でも、あるいは少女漫画全体の中でも歴史に残る名シーンの連続で、今でもとても印象に残っている巻です。
黒沼爽子がクラスメートでずっと好きだった風早翔太に勇気を振り絞って告白するというシーンは、9巻の巻末からとてもドキドキして読んでいました。
告白といっても奥手な爽子なので中々うまく言葉にならずに、最後にはとにかく「好きなの」と告げることが精一杯でした。
でも風早はそんな爽子を優しく受け止めます。
この時の風早のセリフ、「ちゃんと黒沼のこと正面から見れてなかった気がするんだ」と爽子の顔をしっかり見て言っていて、印象的でした。
しかし2人が抱き締めあっている時に、クラスのお調子者である男子、ジョーが教室に入ってきてしまいます。
慌てて2人が離れて、爽子は用事を思い出したと出ていってしまうのはお約束な感じですね。
その時は文化祭の真っ只中で、2日目はクラス別に仮装してパフォーマンスをするのですが、風早も爽子も、衣装を縫ったり山車を作ったりと前の夜にそれぞれ準備に追われていました。
高校入学当初と違い、風早のおかげもあってクラスにすっかり馴染んだ爽子が、女子と恋バナをしたり相談に乗ったり。そんな何気ないシーンも微笑ましかったです。
そして爽子風早も、翌日もう一度ちゃんと告白しようとお互いにメールをして、「早く会いたい」と夜空を見上げます。
そのシーンもキレイでした。
文化祭2日目。白装束のような衣装を着てお皿を数えたりする爽子を見守る風早は、これまでの爽子との思い出を回想していました。
「君に届け」はなかり長期に渡って連載されていましたが、やはりこの10巻がひと区切りと言えます。
文化祭1日目は、爽子のクラスの出し物は黒魔術カフェといって、教室で薬草茶や薬草スイーツを振る舞いながら、爽子が主に女子生徒たちの恋愛相談に乗っていました。
それが好評となり、模擬店部門では見事に爽子のクラスが1位となりました。
しかし仮装行列部門では、爽子が担任教師の荒井一市の入れ知恵でパフォーマンス時に審査員に缶ジュースを差し入れしていまのですが、それがワイロと見なされて点数をゼロにされてしまいました。
その辺りはとてもコミカルで面白かったです。
そんな文化祭も無事閉幕し、風早は爽子を呼び止めます。告白の続きをして本当に気持ちの通じあった2人、風早が「やっと届いた」と言いますが、読者も待ちわびた瞬間でした。
まさに10巻のハイライトシーンです。