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春の呪い 2巻 ネタバレ注意

投稿日:2017年1月10日 更新日:

【本ページはプロモーションが含まれています】

春の呪い、2巻 感想

※ネタバレ注意です※

「春の呪い」完結巻です。

5話~最終話と、番外編が2つ収録されていました。

いい意味でスッキリしない 余韻を残す結末と、笑える番外編です!

まだ病気が発覚する前から始めていた春のSNSに綴られていた妹の心を、夏美が読んでいき当時の出来事が回想されていきます。

デート中に冬吾が体調を心配してくれて、こども扱いに悲しくなりながらも嬉しかったこと。

病気が発覚した時の心境。入院生活の中で気づく、夏美と冬吾の大人らしさ。姉への憧れ。

夏美が春に「冬吾さんと結婚するんでしょ?」と聞いていた時、夏美はツライ気持ちを隠しながら話していたのだと思いますが、春は春で、自分とは違い現実的な考え方ができる夏美に対し劣等感を覚え、暗い気持ちを抱えていくようになってしまったのですね・・・。

(お姉ちゃんと冬吾さんのほうが、うまくやっていける気がする・・・・・・)

そう思ってしまった翌月に、夏美といることで楽しそうにする冬吾の笑顔を見て、春はとても悔しかったと思います。

身近な人物が亡くなってしまうというテーマの作品で美しくまとめるのならば、亡くなる人が 残される人の幸せを願うという描写だったりするのでしょうけど、でも実際には難しく、春のように何かを羨んで妬んで・・・という気持ちは止められないのではないでしょうか。

むしろ、秘密のSNSだけにしか本音を吐き出さず、直接その想いを夏美にぶつけなかった春はスゴイと思いました。

しかし、偶然に春の心を知って、夏美が悲しい衝撃を受ける内容だったことも確かです。

「もし二人を引き離せるのなら・・・どちらかを連れていけるのなら、わたしは姉を連れていく。姉を地獄に道連れにしてでも・・・ 彼には生きて幸せになってほしい。だから写真だけでいい 写真だけでも わたしは彼を連れていきたい」

まさか死んだ人間にフられるとは・・・と打ちひしがれる夏美が、冬吾と一緒にいて楽しいと思ったことに対して、春への罪悪感をさらに募らせていました。

冬吾のことを夏美がどう思っているかが分かるシーンでもあり、春が今どんな気持ちでいるのか ということを夏美は考えて、そして恐れ、「春の呪い」という本当のタイトルの意味が分かった気がします。

不毛な思いとは決別して、夏美のことも過去の気の迷いとして清算できるかもしれないと考えていた冬吾。

だけど冬吾にとって夏美は、すでに生きる意味そのものになってしまっていたのだと思いました。

安い人生だと自分を嗤う冬吾を見ると、これまで心が大きく育まれることのなかった人生を歩んできていたことが明確に表れているような気がします。

大切な人ができたのに“安い”と言うなんて・・・という意味でも、反対に夏美だけしか生きている意味が見いだせないなんて・・・という意味でも。

だとしても冬吾は今の自分を受け止めるしかなくて、やはり夏美を忘れることができなかったのですね。

そして夏美も、冬吾が事故に遭ったことで、彼を好きになってしまった気持ちを泣きながら認めていました。

「それなら、どうせ死ぬなら、あなたと一緒にいて死にたい、春はわたしの たった一人の家族なんです・・・、妹に呪い殺されるのなら、本望です」

夏美と冬吾が両想いになるという展開は予想していましたし、そうなってくれて嬉しいという気持ちもありますが、たとえ2人の心が通じ合っても それで終わりではなく、生きていくことと死ぬことから目を逸らさず描ききっている作品だな・・・と思います。

夏美も冬吾も家を出て、そして一緒に住むことになり、生きることの苦難は2人で乗り越え、春の呪いは それぞれ一生忘れずに生きていくのだろう、というラストだったと感じました。

夏美と春と冬吾の話ではありましたが、私は夏美と義理の母親との最後の会話が最も印象に残っています。泣きました・・・。

おそらく、夏美は父と、冬吾は母と、分かり合えないまま時が過ぎていくのでしょうね。

だけど 夏美には母と弟、冬吾には篤実さんと兄たち、最愛の人ではなくても2人のことを見守ってくれる人はいるんだろうなぁ、なんて思いました。

母の涙を振り切り 冬吾と生きる道を選んだ夏美は再び、春が今 何を思っているのかと考え、後ろにいて自分を見透かしているかもしれない春を探すために、今度は振り向きます。

ですが、振り返っても春はいません。

今 相手が何を思っているかを知るには、血が繋がっているかどうか 好きか嫌いかという以前に、生きている者同士でしか出来ないのだなぁと、この作品を読んで深く感じました。

だからこそ生きてる人は前に進まなくてはいけないのでしょうね、なんて思います。

とてもとても奥深い作品でした。


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