WHITE NOTE PAD、2巻 感想
※ネタバレ注意です※
木根として生きていた頃の思考と、“そう”じゃないと思う今の自分の思考で(ばらばらだ)と現・葉菜は感じているのですよね。
城田に対して嘘をつくことに戸惑いが生まれ、とても苦しそうでした。
一方で、周囲に愛される存在の現・木根の中には、恋をしたかった少女の自分はもういません。
見た目ですべてが変わった、そのせいで全部変わった、だけど戻りたいという意思は感じないのですよね。
現・葉菜が「・・・皆ふつうにカラッポなのかもな」と言っていてことには、何だか納得してしまいます。
何かがあって、周囲の評価があって、人は満たされていくものなのかなぁと思いました。
「あんたのなりたかった あんたになってやりたい」と言って繋ぎ止めようとした葉菜は、木根のために何かをすることで自分を見失わないようにしているのでしょうか。
たとえ戻れたとしても今の葉菜の人生は生きられない木根が、それを望まないことが悲しいような当然のような・・・。
人に影響されたり、一緒にいる人に似てきたりすることと、葉菜と木根がまざり合っていくことの違いってどこにあるのでしょうね。
岡島さんと成瀬さんが結婚すると聞いても、あまり悲しくはならなかった葉菜。
葉菜として生きていた頃の家に行き、母とも再会したけれど、泣くこともなく他人として接することができている木根。
知らない自分になっていくことの恐怖は想像することしかできませんが、葉菜がしがみつくように木根と、前の自分と離れないようにする気持ちは分かる気がします。
そんな中で妊娠したことに気付いた葉菜の、自分が誰になるのかわからず、わたしが消えてしまうことへの怖さに立ち向かうことなど出来ない姿・・・。
まっさらになってしまってから、もう一度また違うまっさらにしようとしている木根と対照的ですね。
「いつでも新しくなれるんだって、感動した」
人にそう言ってもらえる木根のように生きることは、とても難しいと葉菜を見ていれば分かるからこそ、木根を大きく感じるのだろうなと思いました。
あとに何か遺るものがあると嬉しい、産んでほしいと思う木根に対して、「おれだけ犠牲になるなんて」と答えた葉菜。
ラストシーンは2人で海に行き、葉菜が今後どうするかを決めるところで終わりました。
産まない場合はバリバリ働き、年をとったら木根と一緒に住むのだと葉菜は言います。
「死ぬときひとりじゃないように」と。
産むことにしたら、赤ん坊は新しいわたしたちであり、謎のおじさんとして密接に関わってもらう、その場合は死ぬとき一緒にいてやれないかも・・・。
未来のことを話す2人が進む道は、葉菜でも木根でもなく、これからの自分なのだろうなぁなんて思いました。
このまま元には戻れず、入れ替わったことも忘れていくかもしれない、その後の人生の方が長いから。
葉菜がどんな決断をしたのか、それは描かれず、余韻が残るとても深い作品です。