ふつつかな悪女ではございますが　最新話 / 24話

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〔父さん〕

〔この匂いは 甘いお酒ね〕

「ハァ」

「ハァ」

〔おお　　よく分かったな 蓮珠〕

〔まだ飲めんのに　　さすが酒坊の娘だ〕

「ハァッ」

「ハァッ」

「ハァッ」

『お父さん』

『お母さん』

「ハァッ」

「ハァッ」

「火を放て！」

「家も酒坊も すべて焼き尽くせ！！」

『どうか無事でいて…！』

「おね」

「シッ」

「よく燃えますな」

「酒のおかげだ」

「将軍 生き残りを掃討させますか」

《ぎゅっ》

「…それには及ばぬ　　捨ておけ」

「どの道 生きられまいよ」

「………」

「よし　　行くよ 翠玉」

「おねぇちゃん」

『ああ…』

『私の生まれ育った邑が』

『焼け落ちていく』

『父さんと母さんが…』

『先祖代々 大事にしてきた酒造りの邑が…』

『忘れるもんか』

「うっ」

『この悲惨な光景を』

『私は決して忘れるもんか！！』

「うっ」

《ゴホ ゴホッ》

「おねえちゃん…」

「ふぅ」

「ふぅ」

『翠玉…』

『そうだ　　翠玉　　妹だけでも助けなくちゃ』

〔蓮珠！　　翠玉をつれて逃げなさい！〕

『お母さん…！　　どうしよう』

「ハッ」

「ハ…ッ」

『息が　　もう力が……』

「ハッ」

『天帝さま　　この白渓を…』

『家族を…　　私を捨てるんですか』

「ご…めんね…」

「翠玉……」

『天帝さま……』

《ドッ》

《ガラ ガラ　ガラ》

「待て！」

「誰かいる！」

「危険です！　　一刻も早く ここを抜けねば」

「停めろ！　　子供が倒れてる！」

《ピク》

「まだ生きてる！　　馬車に乗せるんだ！」

「××様！」

「これ以上を乗せる場所はありません！」

「荷物を捨てればいいだろう！」

「私はこれ以上 民を失うわけにはいかないのだ！」

《ふわ…》

（誰……）

「しっかりしろ　　もう大丈夫だ」

（あたたかい）

「よくぞ生きていてくれた」

「ともに都へ行こう」

『かみ…さま』

『このひとは　　私の天帝(かみ)さまだ』

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