銀太郎さんお頼み申す　最新話 / 11話

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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『「返してくれるの いつでもいいよ」』

『そのまま返しそびれた本が まだ実家の本棚にあることに気付いたのは』

『ほんの偶然だった』

「なぁにー ふふ くすぐったい」

「…唇」

「さっきのオリーブの匂いがする」

「えー？　ふふ」

「うそだぁ」

『シャンプーの香り　　その下から立ち昇る』

「そんなの わかんないでしょ」

『アンバーグリス』

『白檀』

『イランイラン』

『ムスク…』

「…？ どうかした？」

「…うん」

「ごめん」

「君じゃない」

「…わー…」

（随分 雰囲気のある建物だなー）

（あ 丸窓の鉄格子模様が可愛い　　昭和初期… もしかして明治？）

（いい手触り）

『猫２匹』

『煙草　　ポケットにガム』

『コーヒー… …と』

『古本の匂い…』

「やっと見つかったぁ　　問い合わせのあった本」

「やっぱり一度 ちゃんと整理したいなぁ　　おじいちゃんの趣味の店とはいえ こうも雑多なのはねぇ…」

「あ いらっしゃ…」

『あれ…？　　どこかで…』

「―――本」

「返しに来たんだ」

『本？』

「それと―― 甘楽さん」

『私の名前…』

「よければ君の」

「匂いを嗅がせてくれない？」

「姉ちゃん 今日 店に変質者出たんだって？　　ほんっと 変なのにはモテるよなぁ」

「うるさい！」

「あった！」

『九条…覚…　　中学３年の時 同じクラスで』

『私だけじゃなく 誰ともあまり馴染んでなかったような印象』

『そういう少し謎めいた雰囲気に惹かれてた女子もいたような…』

「………」

『「これ 甘楽さんの？」』

『「えっ この本… どこにあったの 探してたの」』

『「家庭科室の机の下　　…そういえば無くしたって言ってた気がして」』

『「よかったぁ ありがとう 九条くん！」』

『確か 教科書に一節 載ってた話が気になって おじいちゃんの店で探してたんだよね』

『「もうすぐで読み終わるから貸すね」って… で 貸して…』

『あとは… えーと…？』

『…話した記憶は それくらい…』

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