東千石さんのメイクアップドール　最新話 / 11話

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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『―――今夜 私は　　妻になる』

「―――――ん…」

「ふっ…」

「ま…まってくださ…あっ　　私…まだ…」

『…けど…』

「やっ…」

『やっぱり まだ――』

「いっ…」

ヒュッ･･

「いやああっ！！」

ゴッ…

ドサ！！

『や…　　やってしまった…！！』

「ご…」

「ごめんなさいっ！！！」

「――この俺を拒み」

「殴る女がいたとはな…　　おもしろい」

「ああ もう！」

「なんてことをしてしまったの！？ バカバカ！」

『私 ルチア・フェン・リグニスは　　リグニス王国から はるばる海を渡って ワルドザハラ王国に嫁いで来たのですが――』

『いくら初めてで怖かったとはいえ 大事な初夜に殿方を殴ってしまうなんて！！』

「それもこれも全部 お父さまのせいよ！」

『武術マニアのお父様に 幼い頃から叩き込まれた武術のせいで』

〔よいか ルチア！〕

〔女とて 己の身は己で守るのだ！！〕

『危機を感じると 体が勝手に動いてしまうように！』

『訓練の様子を見られ 私のことは国中に噂され』

『男性は皆 私をさけるようになり』

『つけられた あだ名は』

『「鉄拳姫」』

『小さい頃から 女の子らしいこと かわいいものが大好きで』

『物語のように 王女らしく素敵な王子様と出会って』

『素敵な恋 幸せな結婚に憧れていた』

『そんな私に舞い込んだ 結婚のおはなし』

『そして たった一人でやってきた　　見知らぬ異国の地』

『美しい聖堂での結婚式』

『そこで初めて対面をした お相手の方に―――』

「お前がリグニスの王女か」

『恋をしてしまったのです！』

「我が花嫁」

『低く甘い声　　優美な長い指』

『黒曜石を思わせる艶やかな髪　　刃のような銀の瞳』

『ワルドザハラ国王 シーク・アファルサード』

『私は 彼の花嫁となった―――――』

『素敵な旦那様と　幸せに……』

「そう思っていたのに…」

「あんなにキレイなお顔を殴ってしまうなんて 私のバカ――！！」

「きっと怒っていらっしゃるし 幻滅されたに違いないわ！！」

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