ふたつのスピカ、最終話 完結16巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終回はアスミや仲間たちのそれぞれの後日談となっています。
明るく爽やかだけれどもどこか切ない、いつまでも物語の余韻に浸ってしまうようなそんな最終回でした。
アスミは前回までに宇宙飛行士になって宇宙に行くという夢を叶え、「ライオンさん」といういつも傍で支えてくれた大切な人(正確には人でなく幽霊ですが)と永遠に別れるという大きな出来事を体験するわけですが、最終回ではもう前を見据えて次の夢へと歩んでいます。
アスミは宇宙学校を卒業したその後、宇宙事業団に臨時職員として働きながら教職の資格を取るために四年生の大学に通うというハードな毎日を過ごしています。
それも「ライオンさん」がアスミにたくさんのことを教えてくれたように、自分もたくさんの子供たちに夢を教えてあげる人になること、いつの日か子供たちの時間割に当たり前のように「宇宙」があること、その夢を叶えるためなのです。
物語の初めから最後までアスミは本当に強い女の子でしたね。
どんなに辛いことがあっても宇宙が大好きという気持ちと宇宙飛行士になるという夢を捨てることはありませんでした。
これまでにもその純粋さと真摯さには何度も涙を誘われましたが、最終回ということもあり改めてその強さや逞しさに胸を打たれずにはいられませんでした。
アスミだけではありません。親友であり大切な仲間であるケイちゃんマリカちゃん府中谷君もそれぞれ夢に向かって前を向いて進んでいきます。
本当に最後まで爽やかな連中だったなと思います。
少し切ないと感じるのは著者のノスタルジーを誘う暖かな画風と本来そこにいてほしかった「ライオンさん」とシュウ君がもういなくなってしまってみんなと一緒に笑って最終回を迎えられなかったからでしょうか。
二人はお気に入りのキャラでしたので最後まで一緒にいてほしかったですね。
ところで最終回の中で特に感動したシーンが二つありました。その内の一つが亡くなってしまったシュウ君の幽霊が一人の女の子に出会うというシーンです。
ウサギの着ぐるみを被っていて幽霊の顔が見えないので断言はできませんが、恐らくシュウ君でしょう。
この女の子は作中でアスミと出会い関わることで宇宙が好きになってしまったんでしょうか、シュウ君の「星は好きなの?」という問いに対し「うん、大きくなったら宇宙飛行士になるんだ」と答えます。
これは次世代のアスミと「ライオンさん」を象徴しているといっても過言ではないでしょう。
夢半ばに倒れ未練が残った幽霊と宇宙好きの夢見る女の子の新たな出会いです。
このような形で次世代に夢や思いが受け継がれていくのだなと思うととても感慨深いシーンになりました。夢はいつまでも続いていくのですね。
この女の子もアスミのように「ウサギさん」によって導かれ宇宙に飛び立つのでしょうか。もう一つのシーンはアスミが母校の小学校を訪れ子供たちと語るシーンです。
そこで子供たちは願い事を書いて埋めると夢が叶うという木の傍の地面から「3ねん1くみ かもがわあすみ」と書かれたカプセルを掘り起こしてしまいます。
中には将来の夢が書かれた原稿用紙が入っていて、子供たちはそれを読み上げます。
そこには将来ロケットの運転手になること、もう一つ、「ライオンさん」のお嫁さんになることとが書かれていました。
ここで今まで謎だったもう一つの夢がようやく明かされたのです。
予想だにしない内容でかなり驚きましたが全然いやらしさがなく、むしろ納得してしまう内容でした。
アスミは出会ってからずっと「ライオンさん」が好きだったんだね、ずっと一緒にいたかったんだねと思うと涙が溢れてきました。
「いつの日かこどもたちの時間割の中にあたりまえのようにあるふたつの文字、それが今の私の夢です」というセリフは「ライオンさん」に向けられたものです。
「ライオンさん」と「シュウ君」がいなくなって悲しいけれども、希望に満ちた明るい未来を連想させるような素晴らしい終わり方であったと思います。
この作品に出会えて本当に良かったと思います。