東京喰種 トーキョーグール : re、最終話 完結16巻 感想
※ネタバレ注意です※
東京喰種:reの最終話では前回までの壮絶な竜との戦いから6年後の世界が描かれています。人間と喰種との対立が描かれていた中で、最終的にこの2つの種族が一体どうなるのかとても気になりながら読み進めました。
喰種側にも人間側にも魅力的なキャラクターばかりなので、どちらかが滅びるというような結末は嫌だ、とドキドキしながら読みましたが、最終的にお互いに協力・共存するという道を選び、良い方向へ東京の街は変わっていったようで少し安心しました。
最終話で特に好きなのは、鈴屋什造と篠原捜査官とのシーンです。
鈴屋什造というキャラがこの東京喰種で一番好きで、なんて魅力的なキャラクターなんだろうと、東京喰種にハマったきっかけでもあります。
作中での彼の成長は東京喰種を語るには欠かせないくらい印象的です。
初めの頃は人や喰種を傷つけること、さらに自分が傷つくことに何の感情も抱かないような変わった存在でした。
でも見た目は可愛らしく華奢で女の子みたいなのに、めちゃくちゃ強い。そのギャップがたまりませんでした。
そんな彼が最終話で、感情をむき出しにして声を上げ泣くんです。
鈴屋什造と篠原捜査官の関係は仕事仲間、上司部下という関係を超え、親子のような繋がりがありました。
鈴屋什造は彼にとって欠けていた感情を篠原捜査官との関わりで取り戻していった。それが最後の最後で描かれています。
ファンにとっては待望の篠原捜査官復活。そして、鈴屋との対面。
それだけでも泣けるのに、さらに鈴屋が初めての大泣きする姿にこちらも涙が止まりませんでした。
さらに演出も素敵で、セリフはほとんどなく、竜との戦い後の様子が淡々と文字で語られている中で、鈴屋が泣き崩れる様子がサイレントで描かれている。
それがまた石田スイ先生のセンスが光っていて大好きです。
そのシーンのあとにも今まで物語も盛り上げてくれた登場人物たちの近況が描かれ、ページをめくる手が止まりませんでした。
東京喰種は残虐な描写や、意外な人物が死んでしまったり、ひどい目にあったり、報われない描写が遠慮なく描かれてきました。
それがこの作品の魅力であり、先が読めない、ご都合主義じゃない数々の意外な展開に惹かれました。
でもどうか、最終話だけは皆が幸せで終わってくれ…!と連載中も祈るばかりでした。
そんな中一番心配していたのは主人公の金木研の安否。
それまでの物語の展開的に自分を犠牲にしてこのまま死んでしまうのではないか、結局彼は不幸なまま話が終わってしまうのではないか、とヒヤヒヤしていました。
ですが、その不安を吹き飛ばすように、トーカと子どもと3人で幸せそうに暮らすカネキの姿に、また涙が溢れました。
よかったね、幸せそうでよかったね、となんだか親のような気持ちでした。
それまであまりに理不尽なことに巻き込まれ続けた彼の半生を思うと、この先の未来はうんと幸せになってくれよ、と願います。
それくらい、自分を犠牲に他人を思いやれる人物で、彼が主人公だったから東京喰種を最後まで読み進められたのだと思います。
暗い展開、つらい状況が続く中で、ずっと健気に理不尽な世界で生き、戦う彼の姿は読者の心をいつも揺さぶってくれました。
ずっと登場人物たちと同じような気持ちでヒヤヒヤ、ドキドキしながら読んでいて、最終話で幸せそうな登場人物たちを見て、ああ良かった、とどこかホッとする結末でした。
もちろん世界が抱える問題が解決したわけではなく、手放しで喜べるわけじゃないけど、こんな世界でも日々幸せを感じられるような生活を送っている登場人物たちの様子を最終話で確認できて、読んでいた側も寂しいけど、皆お疲れ様でした、とそっと最後のページをめくることができた、そんな最終話だったのではないかと思います。