もう秘書はやめます、最終話 全98話 感想
※ネタバレ注意です※
最終話は、外伝でした。タイトルが、お父さんはちょっとあれ(完)というものでした。いろいろな障害を乗り越えて結婚し、無事に生まれた息子の目を通しての両親、特に父親像が面白かったです。
太陽(息子の名)の父親(凌士)は、超有名企業の会長で、誰が見ても完ぺきで非の打ちどころがないのですが、ちょっとした弱みがあります。それは奥さん(太陽の母親で名前は笑美)です。
お父さんは、お母さんが好きすぎて、お母さんが男性といること(たまたま習いに行っているフランス語の講座にイケメンがいるということで)を嫌い、必死に邪魔をします。凌士は、頭もよく、仕事も手際よくこなすのですが、子どものころから大好きだった笑美を何年たっても愛しています。愛し続けています。
そのため、習いごとに出かけようとする笑美を引き留めるために、仕事から早く戻ったり、友人家族を呼んだり、体調が悪いと言ってみたり…とにかく出かけないように画策します。
太陽はまだ子供なので、お父さんがお母さんを好きすぎて、こんなことをしているとは想像もできず、周りからは優秀だと言われているお父さんがただの意地悪に見えています。お父さんが子供じみている、お父さんは本当に優秀なんだろか、お父さんはお母さんを信頼していない…そんな風に大陽の目にはうつったようです。
しかし、一枚上手なのは笑美です。もともと凌士の秘書をしていたので、凌士の行動パターンは知り尽くしています。凌士の自分への態度が、自分を愛するからだということと、完ぺきなくせに子供じみたことをする凌士を笑美もまた心の底から愛してるのです。
だから、分かっていて、あえて気づかないふりをして、凌士に合わせているのです。しかし、習い事を3回も休まされたので、そろそろ凌士にお灸を据えようと、「見逃してあげるのも今週が最後だからね。来週からは絶対にフランス語に行くから」「私のことをなんだと思っているの」と耳元でささやき、凌士も「…はいわかりました」と言って素直に聞き入れます。このくだりが可愛いのです。外で威張っている超イケメンの凌士が、笑美には頭が上がらない…というくだりがほっこりします。
途中、笑美は、太陽が父の態度に悩んでいるとき、子どもにも分かるように説明します。
「太陽もいつか好きな人できたら分かると思うわ」
「とても大好きだと幼稚になることもあるし、子供みたいなことをしてしまうこともあるの」
「そんなことをしても相手はそれを唯一理解し、受け止めてくれる人だって知っているから」
「お母さんは嫉妬するお父さんもかわいいと思っているわ」と伝えます。
大陽は、「お母さん…ひょっとして最初からしってたの?」と聞き返し、
笑美は、「もちろん~」「お父さんのことはお母さんが世界で一番よくわかっているもの」と優しく、笑ったのでした。
大陽は、すべてを理解したわけではないけれど、一つだけ分かったと言います。お父さんとお母さんは心から愛し合っているということが。
そして、太陽もお母さんが大好きだということ。その晩、二人仲睦まじくしているとき、凌士は「そろそろ二人目がほしくないか?」と聞き、笑美も「そうね」と言いながら、スキンシップをしているところに、太陽が、「さっきはごめんなさい。だから代わりに一緒に寝てあげる。」と、割り込んできます。結局三人で川の字になって寝ることになります。
大陽が最後に言います。
「お父さんはちょっとあれだけど…」
「理解することにしました。」と。
お父さんの行動がどうしても理解できないようですが、お母さんがいいならいいや…という感じでしょうか。そして、本当に優秀なお父さんですが、太陽にとっては普通の人なんです。そんな、家庭のやり取りがとてもほっこりして、癒される漫画です。