わがままなツバサ、最終話 完結2巻 感想
※ネタバレ注意です※
主人公の紗良が成長して、パートナーのニコとどんどん立派な天使となるのだと、ずっと思っていました。
しかしまさか最終回にこんなにも儚く切ない展開を迎えるのだとは思いませんでした。
天使として仕事をこなす紗良は、ツバサであるニコと順調にステップアップしていました。
わがままで一人勝手だったニコが本当に成長したのだな、の考え深いものがありました。
コロ先輩が出てくると話の中も和みます。彼から告げられた天使の昇級試験。もちろん二人は受ける事を誓いますが、この試験中に事件が起こってしまいます。
紗良を守ろうとした反動で、ニコの記憶が戻ってしまい、ツバサに戻れなくなってしまったのです。
この時は本当にぐっと胸が苦しくなりました。あんなに無表情で心のない顔をしていたニコが、嘆き苦しみ涙するのですから。まるで彼ではないようでした。
もうツバサには戻れない。そう告げられたニコが言ったのは、紗良を想う言葉でした。
自分よりも、紗良をどうにか上級の天使にして欲しい。こいつは誰よりも人の幸せを願えるし、天使としてふさわしいと言うのです。
ひとりの天使にツバサを授けられるのは、一度だけ。ツバサがいなければ天使にはなれない。紗良は、もうその言葉をもらっただけで充分でした。
天使の権利を剥奪されても良いから、ニコを助けて欲しいと願うのです。
彼らに残された道はただ一つ、生まれ変わりをする事でした。
生まれ変わりをすれば二人は離れ離れになり、二度と会えなくなるかもしれない。ですがそれしか方法は残されていませんでした。
隠れて話を聞いていたコロ先輩は、いつもの陽気な姿からは一転、ボロボロと涙をこぼして悲しんでいました。
その顔が本当に切なくて、ずっと二人を見て来たからこそ、込み上げてくるものがあると思うのです。
紗良とニコは究極の決断を迫られるという事になりました。紗良はニコを元気づけようと「良かったね」と声を掛けます。
けれどニコは塞ぎ込み、また一人になってしまうと怯えていたのです。
彼は交通事故で両親を失い、その後遺症で自らもわずか14歳という若さで亡くなってしまいました。
孤独、というずっと今まで忘れていた感情を思い出し、なによりも人間らしく悲嘆します。
ですが、紗良はとても強い子でした。彼にきっとまた会える。と言うのです。
紗良はおっとりとしていて鈍臭くて、とにかく誰かに支えてもらわなければ立てないような子でした。
生きていた頃は病気がちで、結局最後はそのまま亡くなってしまいました。
だからこそ天使になって、みんなに恩返しがしたい。彼女は本当に綺麗でとても強い子でした。
様々な困難を乗り越えて、人々の心に寄り添って来たからこそ、ニコにそんな強い言葉を投げかける事が出来たのだと思います。
もう紗良とニコが抱きしめあうシーンは涙腺崩壊でした。きっと会えると良いね、と心の中で願ってしまいました。
時が経って、突然学校の入学式が始まります。そこに登場するのが、見覚えのない少年と少女。
少年は生まれた時に持っていた髪飾りを大切に身につけ、そして少女も同じ髪飾りをつけているのでした。
いつか運命の人に出会えますように。二人は目があった途端、糸が惹かれあうかのように手を握り合います。
どこにいても、何度でも見つけてあげるよ、と紗良の声が聞こえて来そうでした。
ワガママで自分勝手で、すぐに何処かへ行ってしまうツバサ。そんなニコを紗良は生まれ変わっても見つけて、そして手を差し伸べたのです。
作者の繊細で細かい絵がまた、心情を強く表しています。
最後のページに描かれた、少年少女の面影に紗良とニコが映り込むシーンがとても印象的でした。
少し不思議で優しい物語に、心が洗われました。