純情エスケイプ、最終話 感想
※ネタバレ注意です※
純情エスケイプ、という題名のように、主人公である北川はずっと逃げてばかりでしたが、最後に楽しそうでとても良かったです。
終わりはハッピーエンドでとても素晴らしいなと感じました。
北川の心の葛藤にはとても共感できる点がとても多かったです。
もともと北川はゲイで、昔の友達のことを好きだったのですが、ゲイだと知られた途端に、その友達は離れていってしまいました。
それに加えて陰湿ないじめを始めたのです。北川はそれがきっかけで暗くふさぎ込んだ性格になりました。
彼は中学の時、とても眩しくて可愛らしい、やんちゃな笑顔を見せていたのです。
それが最後の最後になって戻ってきたのを見ると、吉田とうまくいって良かったなぁ、と親のような気持ちになりました。
北川は最初分かりにくくて大人しい雰囲気でしたが、最後に涙をこぼしながら本音を吐露したシーンでは、強くなったなと拍手を送りたくなりました。
吉田というのもかなり癖の強い男だと思います。女好きで色々な女の子を取っ替え引っ替え、かなりのチャラ男です。
もしも北川が男ではなく女であったとしても、嫉妬で怒り狂うに違いありません。
吉田はチャラくてやっている事はかなり粗雑で、褒められることではないでしょう。ですが彼はかなり根はいい奴なのです。
その適当な生き方の中にも筋の通った部分があるのです。だからこそ北川は胸を打たれたのだと思います。
最終話でかつて北川が好きだった親友が現れます。彼のことはかつての好きだった人物であるのと同時に、トラウマの原因でもありました。
顔を合わせた途端にさっと顔を青ざめ、そして走って逃げてしまいます。そこで残された吉田に向けて、彼の本音が現れるのです。
北川をいじめたのは、自分がどうすれば良いのか分からなかったから。思いを伝えられて答えられない状況からどうにか逃げたくて、いじめという形をとったと言います。
それから彼は北川が幸せになることを望んでいるというのです。彼もまた、エスケイプしていたというわけです。
高校生らしく、瑞々しく純粋な感情だと思います。荒っぽいけれど、彼は彼なりに反省し、北川のことを友達として大事に思っていたのです。
自分では幸せにできないけれど、誰かと幸せになってほしい。その言葉がとても印象的でした。
彼の言葉によって、吉田の心も素直になっていったように思えます。
遊んでばかりでチャラ男だった彼ですが、1人の人間だけを愛そう、愛していると気づいたのです。
吉田からの告白はとてもストレートで彼らしいと思いました。
自分の欲に従順で、北川に告白するシーンは緊迫した雰囲気や緊張感がある、というよりも可愛らしくて微笑ましさが溢れていました。
北川が涙をポロポロと流しながら、顔を真っ赤にして耳まで赤くする姿はとても可愛かったです。
2人が最初に出会った場所、学校の屋上の階段で、ようやく2人は両思いになりました。
2人は少し似ているかもしれません。
根っこはとても純情で相手を思う気持ちが人一倍強いけれども、その脆さ所以に怖くて逃げてしまう。
そんな2人が出会ったからこそ、お互いでなければ意味がない、大切な存在へと変わっていったのだなと思いました。
作者の方は新人で、この漫画が初めての作品です。ですがまるでベテランのような貫禄ある物語でしたし、とても驚かされました。
どこにでもありそうな学校の青春時代に、爽やかな風が吹き抜けていくような瑞々しさ。そして初々しくて可愛らしい恋愛模様にとてもほっこりしました。
登場人物の仕草や表情の変化が、最初と最後でかなり変わっているので、それを見比べてみるのもとてもおもしろいと思います。
2人の成長物語りをぜひ読んでみてほしいです。