貧乏神が!、最終話 完結16巻 感想
※ネタバレ注意です※
最後までドタバタ展開で、笑いあり涙あり、たくさんの希望と明るく優しい未来が見え、そして少しの、しかし決して忘れることのできない寂しさが胸に残る、まさに「貧乏神が!」のラストを飾るにふさわしい最終回でした。
貧乏神が!にはこれまでも、主軸はドタバタコメディでありながら暗い面はとことん暗く描かれている点や、どうにもならなかった悲しい出来事をごまかしたり曖昧にしたりせず、きちんと結末まで描き切っている点に好感を抱いていました。
だからこそ、非現実的なストーリーの中にも説得力が生まれ、市子をはじめとする人間だけではなく、人間とはまったく感覚が異なるはずの神様たち、黒幕である碇をはじめとする敵側の気持ちにまでも寄り添えると感じていたからです。
最終回もまさにそうで、告白してOKをもらうまでしか描かれないことも多い、「ヒーローとヒロインのその後」もきちんと描かれていますし、何より、神と人である以上、いや、仮に神様同士・人間同士であったとしても避けられない「市子と紅葉の別れ」までもが描き切られているところに非常に感動しました。
一話から、敵同士ともいえた市子と紅葉が衝突し合い、時に協力し合いながら、少しずつ少しずつお互いを友達・相棒と呼ぶべき無二の存在として認めていく様子を見守っていた身としては、都合の良いハッピーエンドを見せてほしいという気持ちもありました。
要するに、大好きな二人の別れを見たくなかったのです。
ありがちな、「別れたと思われた二人がやっぱり何かの都合で再会し、これからもドタバタな日々を送る」というオチさえ期待しましたし、実際それでも多くの読者に受け入れられたと思います。
しかし、市子と紅葉は笑顔で別れ、紅葉が去ったあとに市子がやっぱり耐え切れずに泣いても紅葉は戻ってこず、市子と紅葉はその後おそらく二度と会うことはない、というところまできちんと描かれています。蘭丸と桃央に関しても同じです。
神様の世界と人間の世界を巻き込んだ、あれほど大きな困難を共に乗り越えながらも、そのことは当然のように過去になり、時は流れ、市子たちは成長し、紅葉たちはそれぞれの立場や仕事に戻っていきます。
それまでの奇想天外・波乱万丈なストーリーと大きなギャップがある、このやけに現実的な結末に胸を打たれ、私は最終回を読み終わってからしばらく切ない気持ちを引きずりました。
市子と紅葉が最後に一戦交えるのも「貧乏神が!」らしくて熱くなってしまったのですが、その一戦がどちらかが倒れて決着するのではなく、市子が紅葉に抱きついて終わる、という展開がたまらなく愛しく、市子の成長とともに紅葉の心境の変化も痛いほどに感じられ、だからこそ避けられない別れを余計に悲しく感じました。
抱擁の直前、お互いの表情の変化が段階をつけて描かれているところですでにウルっと来ていましたが、抱擁したあとの市子の幼子のような様子(声をあげて泣く姿と、自分のわがままを自覚しながらも「もう少しだけここにいなさいよ、ずっとなんて言わないから」と心のままに表現されたセリフ)に、嗚咽するほど泣いてしまいました。
いざお別れというシーンでも、「最初に泣いて、笑顔で別れ、別れたあとは涙をぬぐって前を向く」という流れが王道だと思うのですが、貧乏神が!では「最初に泣いて、笑顔で別れ、別れたあとやっぱり寂しくて泣いてしまう」という流れで描かれています。
この感情の移り変わりが本当にリアルで、抱擁のシーンから流れっぱなしだった涙がもっとあふれ、止まらなくなりました。
「貧乏神が!」は1話からずっと楽しく読んでいた作品でしたが、この切なすぎる最終回のおかげで、忘れられない大切な作品になりました。