思い、思われ、ふり、ふられ、最終話 完結12巻 感想
※ネタバレ注意です※
思い、思われ、ふり、ふられという題名の通り、失恋と片思いのオンパレードの中で、とても綺麗な終わり方だったと思います。
作者さまのお得意である、キャラクターの心情の変化が緻密に繊細に描からていたので、こちらもとてもストンと腑に落ちる結果だったと思います。
まず、理央と由奈サイドの話ですが、理央が本当に由奈のことが大好きで、見ているだけでにやけてしまいました。
今まではずっと由奈が追いかける側で、理央は全然意識もしてくれなかったのに、ここまで大事にされると、良かったねと由奈に声をかけてあげたいです。
最初は人の目を見て話すことさえ苦手だったのに、今では積極的に相手を支えるのですから、大きな進歩です。
最後に由奈の方からキスをしたのが、その成長の現れであるように思えました。
由奈といちゃつくのを、ご近所のママさんが噂し、嫌な思いをしている理央が、由奈の事が一番大事だからといって、一大決心したのはまたとても男らしかったです。
最初はスカしていて、余裕のある男の子だと思っていたのですが、実際は少年的なウブさが残っていて、焦ったり驚いたりと、高校生らしい顔がたくさん見れてとても面白かったです。
そして和臣と朱里サイドですが、こちらも最後まで拗らせていたなあというのがとても印象的でした。
かなり最初の頃から2人は両思いだったはずなのに、何故か空回りしてなかなかくっつかなくて、和臣もただの天然かと思いきや、意表をつくような表情を見せたりと、朱里が好きになる気持ちがよく分かりました。
ですが、2人はせっかく付き合いはじめたのに、突然の別れ話で喧嘩になってしまうシーンはヒヤヒヤしました。
お互いを思っているからこそ、相手を尊重し過ぎて白熱してしまったのです。和臣の見る目はとても鋭いと思いました。
朱里がアメリカに行きたがっているのではないか、というのは図星だったのでしょう。
対する朱里は、和臣と離れたくないという気持ちでいっぱいでした。
個人的にとても好きだったのは、仲直りの方法です。2人はお互いの下の名前を呼びあうことで和解します。
言葉が少なくても、そこで通じ合っている感じがしてとても良いなと思いました。
最終的には朱里はアメリカへ行く決断をするわけですが、そこまでの行程がいままでの流れ全てを体現しているようで、素晴らしかったです。
ずっと引越しばかりで友達とも離れてしまう、それゆえにどこか淡白というか根を下ろさない性格からか、決まった友達が出来ずにいました。
そんな朱里が和臣に対して、「私達なら離れていても大丈夫」と言えたのは、朱里の大きな成長に繋がっていたのだなと思えました。
それから数年の月日が経ち、 一番最後のシーンである事が起こります。
それが、和臣がアメリカの大学に進学するという事でした。朱里の元へと、国を超えて向かったわけです。
これはとても男前だな、思いましたし、なによりもアメリカでの2人のやりとりがほっこりしました。
朱理が英語で「catch me」という札を持ち、待っています。それを見て和臣が朱里を抱きしめて、「つかまえた」と言うのです。
そこで物語は終わるのですが、このつかまえた、というのが今までの2人のやりとりを想起させて、とても感慨深いものとなりました。
以前に2人は鬼ごっこをして、その時は朱里が和臣を捕まえに行きました。
そして今度は和臣が捕まえに来てくれたのだな、と2人が嬉しそうな笑顔を浮かべるのを見て、ハッピーエンドで良かったなと思いました。
片思いや失恋を乗り越えて、4人の少年少女たちが立派に成長し、まるで親にでもなったような気分で、最終回で全員の笑顔を見る事ができて良かったなと思う事ができました。