腐った教師の方程式、最終話 完結10巻 感想
※ネタバレ注意です※
想いは叶うものだと思いました。
敦は、ずっとずっと雅美(まさよし)との事が好きでした。
初めて会った高校一年生の頃から、彼の想いは変わらず、恋人となっても、例えそこに肉体関係などなくても、敦の気持ちは変わりませんでした。
同性同士の恋愛というと、どうしても普通の恋愛とは違うと思っちゃうんですよね。
でも、男性同士だとしても、愛する人を大切にする気持ちに、変わりはないのです。
敦は、大切だから雅美に無理はさせたくない。
でも、雅美は愛しているから、無理をしてでも敦を受け入れたいと思うようになりました。
ソファに並んで座り、画面を見つめながらも、必要以上に体を寄せてくる雅美に、敦は焦ります。
彼にすれば、理性を総動員させて、何とか雅美の事を傷つけないようにしようとしている敦には、確かに辛かったのだと思います。
ですが、雅美はそんな敦だからこそ、心を決めたのだと思います。
恋愛というのは、好きだという言葉だけでは、証明が出来ないような気がするんです。
ですが、女性との恋愛しかしてこなかった雅美にとって、焦りはあったのだと思うんです。
もう、敦は高校生ではありません。
敦は、教育学部に進学して、教育実習生として女子高へと行っているのです。
雅美の中でどんどん敦という存在は大きくなっていったんだと思いました。
かつての教え子だった敦は、もう立派な大人の男性へとなっていたんだと、雅美は改めて思ったに違いありません。
ベットで、敦が誰とも経験した事がない事を知った雅美は、やめようと言いました。
それは、まっさらで綺麗な敦に、自分が汚点をつけてしまうと思ったからです。
ですが、その言葉に焦ったのは敦です。
長い間、敦は雅美だけを見つめて来ました。
その雅美に、汚点などという事を敦が思うはずはないのです。
僕はずっと先生のものだよ。と、囁くように言う敦は、もう大人の男性の色気を身に付けていました。
雅美は、ずっとハーフである事などに悩んでいた雅美は、どこか孤独だったのだと思います。
ですが、これからはもう孤独ではないんです。
そして、雅美にとって最愛の兄である雅美(まさみ)と恋人である透の結婚式が始まりました。
本来なら、歓迎されない結婚式なのかもしれません。
ですが、二人を祝福する人々の顔は、皆笑顔でした。
全員が分かっているのです。
この結婚式は、単なる形だけ。
雅美と透は結婚しましたが、戸籍上認められた訳ではありません。
ですが、二人にとっては形だけでも良いから、結婚したかったのです。
寄り添う二人の姿は、とても幸せそうでした。
敦から連絡を受けて、途中まで迎えに行く雅美は、とても嬉しそうでした。
走ってくる敦に向かって、「遅い」と文句を言う姿も、そして敦の「ごめん」という言葉も、いつもと変わらないように見えました。
でも、そこには今までとは違う空気が流れていたように思えます。
先生と生徒として出会ってから、やっと二人は恋人同士になり、これから、二人の関係はますます変化していくと思います。
同性同士の恋愛の厳しさも、難しさも知っている二人です。
きっと、それらの厳しさも難しさも、二人なら乗り越えていけるのだと思います。
最終話を読み終えた後、私の恋愛感は変わっていました。
人を愛するという気持ちに、同性だという事は関係ないのだという事を。
ですが、単なる好きだというだけでは難しい事も、この作品は教えてくれました。
最後のカットで、二人が手を繋ぐシーンに、心がジーンとしました。
すごいラブシーンではないのですが、それだけで、二人がどれ程愛し合っているのか、伝わってきました。
最終話という寂しさもありましたが、清々しいラストだったな、と思いました。