魔法騎士レイアース、最終話 完結3巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終回って、皆がハッピーエンドになるのだと思っていました。
そして、ヒロインは正義の為に戦っているのだと思っていました。
最終話には、光達がエメロード姫を救い、セフィーロには平和が戻る。
そう、信じていましたが、良い意味でこの作品は、意表をついていました。
こんな哀しい戦いが光達を待っているとは思いませんでしたが、今まで読んだ事もない、斬新なものでした。
そして、エメロード姫の心がこれほどまでに深い愛を抱えているとは思いませんでした。
彼女は、「柱」として生きてきた事に、何の不満もなかった筈です。
皆の平和を祈り、美しい世界をたった一人で支えてきた彼女を救う方法が、彼女を倒す為だなんて。
エメロード姫の心が乱れれば、世界は破滅へと向かってしまう。
セフィーロの人間は、姫を倒せません。
倒せるのは、異世界から来た少女達だけなんです。
あまりにも辛い使命に、言葉も出ませんでした。
ですが、エメロード姫の幸せとは、何だったのでしょうか?
彼女は、「柱」に選ばれるぐらいの心の綺麗な持ち主です。
魔法騎士達への怒りから、大人の女性へと成長して、自ら作り出した魔神に乗り込み、魔法騎士達を攻撃してくるエメロード姫。
おそらくその姿も、本当のエメロード姫だと思います。
そして、僅かに残った理性で魔法騎士達に語りかけてくるエメロード姫も、本当のエメロード姫だったと思うんです。
彼女は、本当にザガートを愛していたのだと思います。
本当に人を愛したら、その人の事だけを考えていたい。
その人が幸せなら、それで良い。
そんな当たり前な考えも、エメロード姫には許されなかったのだと思うと、切なくて、胸が締め付けられるような気持ちになりました。
エメロード姫は、魔法騎士に倒される事で、ザガートへの愛も、セフィーロへの愛も守ろうとしていたのだと思うんです。
最初から、どちらかを選ぶ事など、エメロード姫には出来なかったのです。
その二つの心に、エメロード姫はいつも苦しめられていたのだと思います。
自分を倒して欲しい。
そう願うエメロード姫に対して、苦渋の決断をした光達は、とても辛そうでした。
ですが、光達の決断がエメロード姫を長い苦しみから解放したのは事実なのです。
合体したレイアースがエメロード姫の魔神を貫いた瞬間。
エメロード姫は、本当に幸せそうでした。
これで、やっと愛するザガートの事だけを考えられる幸せに、エメロードは満たされていたのです。
満足そうに微笑んで消えていくエメロード姫と、そして、自分達の世界に帰ってきた光達の悲愴な表情が対比となって、かなり良かったと思います。
漫画というのは、正義と悪がハッキリしているものだと思っていました。
でも、現実はそんなわけないんです。
この作品の素晴らしい所は、良い意味でお決まりを破った事だと思うんです。
人間の心は、ほんの少し角度が違えば、正義と悪がいつでも反対になってしまうという事を、この作品は教えてくれました。
そして、エメロード姫との戦いは、光達をとても成長させてくれたのではないかと思います。
光と海と風が、しっかりと互いを抱き締めながら、声もあげずに泣いているラストは、言葉では言い表せない彼女達の苦悩を物語っていました。
「こんなのって、ないよーっ!!」という光の叫び声は、いかにエメロード姫との戦いが辛く哀しかったかを物語っていました。
中学生の女の子が背負うには、あまりにも重たいと思いましたが、この作品は多くの事を教えてくれました。
愛する人との幸せよりも、世界の安定を願う尊さ。
どれだけ辛くても、その人の願いを叶える為には、時として非情な決断をしなくてはいけない辛さ。
そして、何よりも大切な人を思い合う素晴らしさです。
誰かを大切に思うからこそ、悩み、迷い、そして、決断するんだという事を教えてくれました。