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封神演義 最終回 23巻 ネタバレ注意

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封神演義、最終話 完結23巻 感想

※ネタバレ注意です※

封神演義は週刊少年ジャンプで連載されていた、同名の中国の歴史小説を題材にした作品です。

人気が出なければ打ち切られる週刊少年ジャンプという雑誌で、歴史モノというジャンル、それを、物語の最期の場面まで到達したという事がまず大きな偉業ではないかと思います。

歴史モノ、と書いておいて何ですが、この漫画の最終回で、この物語は歴史モノでは「ない」可能性を示して物語の結論として提示して結びます。

矛盾しているように見えますが、これは、この作品の特徴で、原典(中国の小説)では死ぬ人物が生き残り、逆に生き残る筈だった人物が死に、読者はそれに困惑し、「自分の好きなキャラクターは最後まで生き残れるのだろうか」とハラハラさせてきます。その上で「どうして原作と違うことをするんだろう?」という疑問を誰もが感じるのではないでしょうか。

それが、この物語は歴史モノでは「ない」可能性を示すものなのです。

作者はこのような疑問を読者が感じるように、時にメタフィクション的に、語り掛ける体裁を取って推理させます。しかし、それに全くついていけなくたって構わないのです、私は何言ってんだろう、何か大事な事なんだろうなと思いながらもすっかり忘れて読み進めましたが、推理する楽しみというのもこの作品にはあります。

そして、推理しない読者に対しては、歴史という予め答えの用意された物語である筈なのに、予想外の展開にアッと驚かされる喜びと悲しみを与えてくれるのです。

この物語において、最終目標は歴史の道標を壊す事でした。

それは、歴史モノという展開が予め固定されていて、誰もが結末を先に知る事が出来る、現存する歴史に対する、歴史モノというジャンルに対する反旗だったのではないでしょうか。

そしてそれを、肯定的に受け止められたのは魅力的なキャラクター達のお陰で、読者は「決められた歴史を護る」ことよりも「彼らが幸福に生きる可能性」を信じたいと思いながら、作者と、太公望について最終回へ向かっていきます。

最終回でも予想通りにはいかないのは同様で、最終決戦で死んだはずの太公望が生きている、という話で物語が展開していきます。太公望を探す、かつての仲間を茶化すようにコマの後ろの方でおどけている太公望は、ひとしきり彼らと戯れ、最期は彼はたった一人、何処かで立ち止まり、振り返ります。

その後の彼の人生が、歴史ではこうなった、こんな説がある、というようなことが語られた後、それを一蹴し、否定する一言で物語は幕を閉じてしまいます。

歴史モノとして物語をスタートさせながら、それを否定する地点に到達する、どんでん返しを最後まで見せて読者を驚かせてくれるところが、この作品の魅力ではないかと私は感じました。

また、昨今「歴史を守る」=「現在を守る」=「歴史は変えてはいけないものだ」というテーマの作品が多く見られるように感じます。

歴史というのは大きなジャンルです。魅力的な人物が、今現在に至るまで、数えきれないほど存在する一大ジャンルです。

それを否定して、新しい可能性を示すことはどれほど難しい事でしょう。

封神演義は、それをキャラクターの生きた魅力で読者を説得させ、歴史を題材にした物語の最終回であっても、登場人物が「この後、数年で死ぬ」とたとえ歴史書に書かれていても、読者に寂しさを与えないで希望と祈りを持ったまま終幕を迎えさせる力がありました。

歴史を変えるということは、必ずしも悪い事ではないのではないか、死ぬ運命の誰かの生存を祈ることは間違いではないのではないか。

私はこの問いの一つの答えとして、最終回を受け止めました。

もし、同じように「歴史を守る」という事に対して納得できないモヤモヤした気持ちを持った方がいらっしゃるなら、封神演義を是非、オススメします。そして、最終回に至った時、きっと新しい風を感じる事が出来るかと思います。


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