海街diary、最終話 完結9巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話、今までのすべてが集約されている「行ってくる」というタイトルでした。
それまで読み進めていれば当然「行ってくる」は、当たり前の流れなのですが、実際にタイトルを見た時、「ああ、これで本当に最終話なんだな」と思い、それだけで胸にずしんと響くものがありました。
「行ってくる」だけで、最終話の流れは分かるはずなんだけれど。
幸さんとヤスの会話は最終話でも、ものすごく落ち着いた感じでした。
幸さんが思っているけれど言葉にならないような思いをちゃんとヤスが言葉にして幸さんに伝えていました。
ヤスにきちんと思いを言葉にしてもらっていることで、幸さんは自分の気持ちが整理できているのではないか、というようないいシーンだと思います。
ヤスは感情的にならずにいつも優しそうでうらやましいです。
チカちゃんは最終話でも、きちんとチカちゃんでいてくれました。
末っ子らしい能天気さ(実際にはすずちゃんがいるから末っ子ではないけれど)を、お母さんになるからとは言って失わず、このままのチカちゃんでいれば、絶対にいいお母さんになることは間違いありません。
きっと、チカちゃんは何があってもこのままのチカちゃんでいてくれるんじゃないかと思えて気分がほっこりします。
きっと店長さんも楽しいお父さんになりそうですね。
そして福田さん。二ノ宮さんとの約束を果たすためにヒマラヤに向かわれたわけですが、居場所のなかった彼にとって鎌倉はどれだけ大きな存在の場所なんだろう、と思ってしまいます。
大人になってそんな場所を見つれられた福田さんはとても幸せだとも思います。
すずちゃん。直ちゃんの卒業制作を見ないで、と言って隠したりするところがとてもかわいかったです。
卒業制作の写真のすずちゃんは大人っぽくて内面の強さを感じられますが、写真をかくすすずちゃんはかわいさそのもので、そのギャップがとても微笑ましいです。
いつも元気でいるすずちゃんですが、最終話の最後は自分の未来に向かって一直線に進んでいる感じがしてとてもいいです。
芯の強いすずちゃん、がよく表れていると思います。
直ちゃんの手紙も、とても良かったです。
自分の気持ちが丁寧に書かれていて、でも誇張しすぎることなく未来に向かっている手紙、いいものです。
鎌倉をたつ朝には特に別れの朝だといって湿っぽいことをするわけではなく、佳乃さんといつも通りの朝ご飯を食べていますが、このシーンがとても好きです。
佳乃さんの、すずちゃんを心配しつつも笑顔でいつもの朝のように送り出そうとする、でも大事なことは抜かりなく伝える、みんながみんな、優しさをもってお互いに接しているからこそ、このような穏やかな朝が迎えられるのだと思います。
静かででも優しさが満ち溢れている、とてもいいシーンだと思います。
風太とすずちゃんの別れも、しめっぽくなくてとても良かったです。
そこかしこに、ちょっと遠くの高校にいくだけ、というすずちゃんの気持ちがあふれていました。
でもちょっとは寂しくないのかな?とこっちが心配になってしまいましたが、でも、すずちゃんも風太も、遠くの高校に行くだけなんだから、それがなんなんだ、大事なことはちゃんと分かっている、と感じているのでしょうか、二人の信頼関係がよく見てとれたので、ここも読んでいて幸せを感じられました。
とにかく、最終話はどこを読んでもみんなの優しさが感じられ、読んでいるこちらは人のあたたかさ、優しさに包まれることができました。
「ああ、今まで読んできて良かったなぁ」そんな風に思い、何度も何度も最終話を読み返しました。
今後も何度も読み返して、みんなのやさしさに何度も触れ、何度も新しい発見をしていきたいです。