食戟のソーマ、最終話 完結36巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終決戦とも言えるBLUEでの戦いのソーマの最後の一皿はなんと!「チャーハン」これには驚きました。
食戟のお題が、世界5大料理を一つの品にした料理を作ることだったので、どんな料理が出てくるか想像出来ないでいたが、料理としてはとてつもなくシンプルにも感じられます。
それこそ作中で言っていた「混ぜ合わせて炒めただけ」なんて捉えられかねない「チャーハン」。
しかし、附田先生ならどんな料理にも意外性とストーリーを付けられると期待しながら読み進めて行けば、「美味しそう・・・」とよだれが出てくるのです。
なぜなら、ただの刻んだ肉、野菜を入れてとき卵を混ぜ合わせただけではないからです。非常に手の込んだチャーハンでした。
一つ一つの材料に中華、インド料理、トルコ料理、イタリア料理、フランス料理等の技法を織り込み作られた「チャーハン」・・・すごく食欲がそそられます。
そして極めつけは、「卵」の使い方。食材の香りを閉じ込めるなんて思いつくでしょうか?
普通は香りを前面に押し出す料理の方が美味しいと思われます。
しかし、あえて料理の香りを卵に閉じ込めて口に含んだ瞬間に香りが出るなんて、漫画で読んだだけじゃどんな感じか想像も出来ないです。
だからこそ、食欲がそそられます。
実際に作ったらどんな「チャーハン」になるのか、ワクワクします。
そして、面白いのは失敗から生まれた香りを閉じ込めると言う技法ですね。
人は失敗を嫌います。嫌わないまでも失敗を快く思わないものです。
しかし、ソーマは失敗を面白がるんですよね。
最後の最後まで、ゲテモノ料理を作ったりしますが、その理由がソーマの亡き母にありました。
ソーマの父はたまにゲテモノ料理を作ったりはしますが、基本的には料理の天才として描かれています。
が、ソーマの母は料理が下手なんですよね。
だけど、料理を楽しむ、しかも、失敗作を平気でお客さんにも出せるし、そのお客さんの反応も楽しむ。そして、お客さん自身もなんだかんだでそれを楽しむ。
今の世の中、失敗したら駄目みたいな風潮がある中では、失敗を楽しむ事が出来る姿勢って言うのはいいなって思えます。
失敗があるからこそ出来上がるものがあると言う事を伝えられました。
最終審判員であるエリナの母・マナをうならせる事の出来、ソーマの言う「失敗の味」で見事勝利を手にして、BLUEでの戦いは終えます。
しかし、それで万事解決では無く、「神の舌」を持つヒロイン・エリナの葛藤が晴れた分けではありません。
エリナの母・マナは食事が出来なくはるほどの「神の舌」を持っていたが、料理の味に絶望していました。
そのため、BLUEの戦いまで食事がまともに出来ない状態だったのです。
そんな母を見ていたエリナは絶望を感じていました。
母を助けることが出来なかった絶望と味見をさせられる料理の味に。
そんなエリナに絶望を感じさまいとして、祖父の仙左衛門は才能のある若者たちを学園に集め、「玉の世代(ぎょくのせだい)」としてエリナと共に若者たちを研鑽させると言う壮大な計画を通してエリナに「料理に希望がある」と言う事を伝えようとしていました。
ここで、なぜ才能ある若者が一つの世代に一つに集まったのかの説実がされていて、納得してすっきりしました。
そして最後にソーマとエリナは食戟をします。
作品の原点に立ち戻ったような、卵料理をソーマは作ります。
最初の頃の話を思い出しながら、最後の卵料理を見るのはなんとも懐かしく思えます。
しかしながら、やはりエリナ姫です。ソーマの料理を「マズイ」と一蹴します。
弱弱しい状態にあったエリナが元気を取り戻し、女王の風体を取り戻します。
ソーマが全ストーリーでの戦いを通して誰にも迎合する事の無い、それこそエリナにさえも迎合する事の無い一皿がヒロインに希望を与え、彼女を救ったお話でした。
仙左衛門の計画通りですね。
後日談なども描かれていますが、後日談も読み応えがあります。
ソーマの母親の事、才場朝陽の過去、ソーマの仲間たちのその後等。
そしてやっぱり最後の最後までソーマはゲテモノ料理を提供し、「マズイ!」とみんなに言わせています。
しかし、「いい料理人になるコツは、自分の料理すべてをささげたいと思える相手に出会うこと」とあります。
そんな相手のために「美味い」と言わせられる一皿を作り続けています。