喰う寝るふたり 住むふたり、最終話 完結5巻 感想
※ネタバレ注意です※
いよいよ長らく同棲していた二人が結婚、そして引っ越しするときがやってきました。
終わってしまうのが、寂しくて、悲しくて、どんな終わり方になるんだろう、でもどんな終わり方でもいい、そんな気持ちで読み始めました。
一番はじめの、引っ越し前の最後の日でも2人は今までどおり、別々の場所で寝るシーンが大好きです。
結婚したからって変わらない、いつもの日常の2人に安心するような、ほっこりするような温かい気持ちになります。
しかしそこから驚いたのは、語り手が、のんちゃんでも、りっちゃんでもなくお部屋だったということです。
すごく新鮮でした。今まではのんちゃんかりっちゃんの視点だったのが、初めての第三者の視点です。
そんな視点から、2人の同棲当初、引っ越してきたときの初々しい姿が見られてとても嬉しかったです。
第1話から同棲期間が長い熟年夫婦のようだった2人も、はじめはそうじゃなかったんですよね。
嬉々として家具を選んで、生活ペースや価値観をすり合わせ、喧嘩もしながら、良い意味で空気のような存在になっていったんだと思うと、今までのお話が一気に思い出されてしまって涙が出てきます。
まるで母親のようにお部屋が、今までのシーンを振り返りながら、2人の10年の歴史をまとめるように語るのには、ますます泣かせられました。
まるで自分も10年間の2人を見守ってきたかのような、そんな気持ちにさせてくれました。
その後の、2人が思い出を振り返りながら、そこまでしなくていい程に丁寧にお部屋の掃除をしているシーンもとても好きです。
やっぱり2人は根っこが真面目で、育ちの良い2人ですね。家庭環境の全く違う2人でも根本的な性格や考え方が一緒だということはとても大切だし、その上に今の2人の関係がなりたっていて、周囲の人から愛されているキャラクラーなんだだな、と思えました。
そして、やっぱりお似合いの2人だなー、と長らく一歩が踏み出せなかった2人がやっと結婚したことが、また嬉しくなりました。もう様々な感情が入り乱れて忙しかったです。
また、不動産のおばちゃんが「どんなに仲が良くてもケンカした時のために、部屋は2部屋!」と2人に言ったそうですが、すごく納得しました。
実は1巻のころから、「何ではじめから2部屋にしたんだろう、同棲なら1LDKでも良さそうなのに」ってずっと気になっていたからです。
2人も言っていましたが、この言葉があったからこそ、きっと2人はここまでやってこられて、良い距離感で過ごせてこられたんですよね。
実はおばちゃんの後押しがあったなんて、伏線回収みたいで嬉しかったです。
ここで改めて、一緒にいて同じ時間を過ごすだけがカップルの理想ではないこと改めて気付かされました。
結局は他人なのだから、お互い尊重しあって生活しなくてはいけない、誰にだってプライバシーや自分のペースがある、と勉強になったシーンでもあります。
そして最後のシーン、いよいよ旅立ち、律儀な2人がお部屋にお礼を言って終わりかと思いきや…また新しいカップルがお部屋の内覧に!
また初々しい、当初ののんちゃんとりっちゃんのような、これからの生活が楽しみで仕方がない、希望に満ちた2人の様子がありありと伝わってきました。
終わるのがとても寂しかったけれど、そこに新しい未来を想像させるところはさすがの終わり方だと思いました。
また新たなカップルがここで歴史を刻むのですね。
またのんちゃん&りっちゃんとは違う世界がここから始まっていくと思うと、自分も前向きな気持ちになれるような気がします。
最後に、のんちゃんとりっちゃんが各々どんなふうに思いながら夜を過ごしたのか、掃除をしていたのか、そして旅立っていったのか…二人の心情が書かれることはない最終話でしたが、むしろ書かれていなかったことによって、もう二人の気持ちは同じ方向に向いている、何があっても大丈夫なんだ、とすっと心におさまるような素敵な空気感の最終話でした。
そしてこれからの2人が想像できるような、読者にも素敵な未来が待っていると思わせてくれるような、幸せな気持ちになれる最終話でした。