黒子のバスケ、最終話 完結30巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話の見出しは主人公チーム全員の顔が出ているのですが、決勝までに頑張ってきた皆の思いがそのひとつひとつに非常に込められていていかに熱い気持ちで戦ってきたか・この試合にかける気持ちの大きさというものが伺えるページになっています。
最終話、主人公の所属するチームが決勝戦でとうとう優勝を決めます。
一番印象に残ったのは主人公の持つサポート的な性格・属性を活かして大人しい主人公のパートナー的なもう一人の野性的な主人公が最後の最後でシュートを決めたという場面です。
今までの頑張りや最後はこの二人をメインとして掴んだ勝利で完結したという部分が非常に心を打ちました。
その後すぐにチーム全員で歓声を上げ勝利の喜びを分かち合う場面に「団体」としての勝利・喜びを大きく感じることも出来てとても心を打ちます。
また、敵側チームのメンバーも一人一人が遜色ない卓越した技術を持っている人間なのですが、負けたことに呆然とするメンバー、怒りをあらわにするメンバー、負けを認めたくない態度をとるメンバーなど様々なリアクションがある姿に、「敗北」によっていろんな表情があることが知れたという学びの気持ちと、そのキャラクターらしさを感じました。
加えて、敵側チームのキャプテンは敗北を味わったことがない人間ですが、この試合によって初めての敗北という今までに感じたことのない感情を味わうことになります。
負けたことによって決してマイナスな感情をあらわにするのではなく、負けたこと自体を一つの成長として主人公に感謝、ねぎらいの言葉をかける場面、そして今度こそは自分たちこそが勝利を手にする、と宣戦布告するシーンにこのキャラクターの人間的な成長を感じて心がほっこりしました。
原作最終話ではとても優しい表情を浮かべており、目じりが下がっているところに思わず涙が出ました。
試合終了後、それぞれのチームの選手は握手を交わして会場を後にしますが、その場面に今まで戦ってきたライバルたちのコマも出てきます。
この決勝戦に至るまで様々な出会いや強敵との闘い、ライバルでありながら仲間であった彼らなしではここまでこれなかったのだろうと思わせるシーンでぐっと心にこみ上げるものがあります。
試合終了後、主人公の高校では優勝の感動もひとしお、普段通りの練習の日々に戻ります。この普段通りの生活に戻っており、キャラクターも元のテンションに戻っている部分が読み手として安心する部分でもあり、冗談を言い合ったりするところが決勝戦の熱気・緊張感・感動といった最高に心打たれる場面からの落差がいい意味であって落ち着きます。
また、この展開が来年の試合やトーナメント、次の物語へつながっていくような流れを作っており読者としては非常に興味深い場面です。
その後、主人公は自分のロッカーに写真を貼るのですが、その写真はかつて中学生時代に苦楽を共にしたチームの仲間であり、かつ高校生になって現在に至るまで戦った大事な好敵手たちが笑顔で写っている写真でした。
その写真に、今までそのメンバーと苦労した部分が最後、笑顔に変わったことによって主人公の行動や気持ちが報われたような気がしてとても成長したな、という思いと主人公の望むような結果になってよかったな、という少し親目線・見守るような温かい気持ちになりました。
試合中の真剣な表情や緊迫感、臨場感を出すために少し尖った雰囲気や禍々しい表現、直線等を多用しながら描写し、試合後は普段通りのキャラクターを見せるために緩い雰囲気、曲線や柔らかい表現などシーンによって描き分けの差が大きいところが、より物語に深みを出している部分で惹き込まれました。
スポーツマンガとしてのスピード感や、緊張感、展開の期待が前半部分にありながら、後半部分は日常生活を織り交ぜることによってラストが柔らかく感動的に終わっていくところに読み終わった後にも何かがいい意味で心に残るという非常に心に響く最終話でした。