お父さんは心配症、最終話 完結6巻 感想
※ネタバレ注意です※
あの伝説の「少女漫画界に咲くドクダミの花」こと岡田あーみんさんの衝撃作「お父さんは心配症」、突き抜けたギャグが放つ世界観を持つこの作品が「伝統の少女漫画雑誌」に連載されていたという事実だけでも衝撃的なのですが、「一体、どのような最終話を迎えたのか」という点が気になる方も多いのではないでしょうか。
作品をしめくくるにふさわしい最終話ですので、やはり主人公の「パピィ」こと佐々木光太郎と、お見合い相手の安井千恵子さんとの「やっとここまでたどりつけた!」という読者たちが待っていた結婚式のお話になります。
この最終話の直前の話でパピィが安井さんにプロポーズをし、その流れからの結婚式になるのですが、このプロポーズ自体も「パピィが交通事故に見舞われてしまうが、お葬式からよみがえり大逆転の愛の告白劇!」という疾風怒濤の展開からの続きである結婚式も、もちろんタダで済むはずはないのです。
まず、貧乏な新婚さんであるため、あやしい旅行代理店から「ソビエト(現在のロシア、国の表記に昭和という時代を感じさせます)まで現地人の変装をして泳いで潜入する」という格安かつ危険極まりないツアーを紹介されてしまったり、パピィの超人的センス炸裂の結婚式の招待状(パピィのパの字はパーティーのパ)を作っていたりと、相変わらずのジェットコースター的なストーリーの展開に「ドン引きするパピィの愛娘・典子」の一方で爆笑させてもらいました。
そして、感動の結婚式!のはずが、結婚式場のスタッフさんの、式場にまつわる危険な過去が明らかになってしまったり、パピィのライバルであった片桐社長の祝辞が(その関係性による反動なのか)次々と大惨事を引き起こしてしまったりと、もうハチャメチャです。
なんと、特別ゲストとして作者の岡田あーみん様まで御降臨!
しかし、作中や単行本のおまけページで描かれる作者像そのままなため、怒涛の結婚式に更なるカオスなエッセンスになったことは言うまでもございません。
相変わらずのハードボイルドなギャグなのですが、なぜこんなにも「お父さんは心配症」という世界が魅力的なのか、その答えが最終話に凝縮されているように思えるのです。
それは、主人公パピィのキャラクターです。
そもそも、パピィは作品タイトルにもなっているように、妻に先立たれた故に、高校生の一人娘・典子が清く正しく明るい道を歩むべく、特に男女交際に関しては厳格になるあまりに「心配症」(性ではなく症)になっています。
典子の彼氏の北野くんをいじめ抜きつつも、北野くんとは最終的に典子関係で絶妙なコンビネーションを発揮するほどの名コンビになります。
それは、ただ単にパピィが横暴オヤジというだけではなく、行き過ぎ感はあっても「典子への純粋な親としての愛情」があることを北野くんが理解しているからなのです。
そして、どんなに邪魔されても典子への愛を貫く北野くんの男気に対して、パピィもまた信頼を抱くようになっています。
その証拠に、北野くんがパピィにお祝いの花束をプレゼントするシーンでは、いつものボカスカ的なものは皆無で、パピィのセリフや表情からもほのぼのとした素直なシーンとなっています。
奇人変人レベルを超越したバイタリティから、幾度となく周囲に迷惑と甚大な被害を与えてきたパピィ(逆に、そうしたパピィに誘発されるように濃いキャラたちによってパピィが巻き込まれることも多々あります)ですが、この人生劇場のクライマックスにおいて、すべてのキャラクターたちや、読者から祝福を受けているのです。
そしてよみがえるパピィの思い出と、その時の表情の秀逸さは、さりげなく本作品のナンバーワンシーンと言っても過言ではないと思えます。
岡田あーみんさん、パピィのメガネを顔の一部分として表現することを、ついにここに極められたという感慨も受けます。
最後の最後に、出番を終えたキャラたちが、ほかの作品に出番を求めて押しかけてゆくというのもさすがです。
こんなにも作品の魅力がたっぷり詰まった最終話、岡田あーみんさんに改めて大きな拍手です!