少女終末旅行、最終話 完結6巻 感想
※ネタバレ注意です※
チトとユーリが大切なケッテンクラートも銃も本も何もかも失ってそれでも目指してきた最上部です。たどり着いた1番上は、何もない真っ白な世界でした。信じられない2人をみて私も悲しくなりました。ここまで2人が1番上を目指して頑張ってきたのに、人も食料もない雪だけの世界だったとは。
チトが絶望して私たちの判断は合っていたのか?と落ち込んでいる中、ユーリがそんなのわかんないよ!とチトに雪玉をぶつけます。頭が良くて考えすぎちゃうチトをいつでも真っ直ぐに励ますユーリはやはり良いなぁと思いました。本気で雪合戦をして熱くなれる2人の関係性も好きです。
最終回で1番印象的なシーンは、雪合戦した2人が疲れて倒れ込んだ後に見る満点の星空(宇宙)と「生きるのは最高だったよね・・・」という言葉です。
結局世界に2人ぼっちになってしまった2人。辛いことがたくさんたくさんあったはずなのに、生きるのは最高だったと思えることが単純にすごいなぁと思いました。達観した境地なのでしょうか。オーロラや雪の結晶、光輝いている星空のシーンがとても美しくて感動しました。今までの2人の旅行を思い出して少し泣きそうになりました。
星空を眺めながらチトが話す「こんなに世界は広いのに何も知らずに自分が消えてしまうのが不安だった。でも見て触って感じられることが世界のすべてなんだ」という言葉が真理をついているのだと思います。チトが感情を言語化したことに対して「わかる。私もずっとそれを言いたかった気がする」とユーリが言ったのも面白かったです。ユーリは言葉にしなくても本質をついているタイプだなぁと思いました。
人がいるかもしれない、食料があるかもしれない。何か希望があるはずと思ってたどり着いた最上部には何もなかった。そんな絶望的でシリアスな状況なのに「世界には2人しかいないから私達世界で1番幸せだね。私(ユーリ)が1番でちーちゃん(チト)が2番かな?あ、でもそれだとちーちゃんが1番不幸に・・・」と話してフフフと笑い合える2人の関係が本当に良いです。家族でも友人でもない、もっと高尚な関係に感じられます。自分達がどんな状況でも、ユーモアを忘れない2人が好きです。
日が出てきて、残っていた荷物を点検する2人。食料はお湯が少し沸かせるだけで後はナイフ、ランタン、ロープ、ワイヤー、そして爆薬。起爆のための銃弾はユーリが持っているよね?と聞くシーンを読んで、あっ、世界は最高だったとか良い話が続いても結局は食料がないから2人とも死ぬしかないんだと悲しくなりました。
しかし、ユーリが爆薬なら私も持っていると取り出したのが、まさかの固形食料でした。固形食料を食べてお湯をすする2人。爆薬で自爆するのは一旦やめて、「これからどうする?」「とりあえず食べて、少し寝て、それから考えよう」と2人でくっついて眠るところで話は終わります。
その後は、建物の最上部から下層部へ向かって淡々と建物や機械などの描写が続き、最後に最上部に存在する謎の図が刻まれた黒い石のようなものが描かれています。
2人は生きているのか?死んでしまったのか?何も分かりません。何もわからないけれど、壮大で美しくとても綺麗な物語だったと胸に残るものがありました。しばらくは忘れられず、2人がどうなったのかとか描かれている黒い石や建物、機械は何なのか。生き残れているとしたらどんな可能性があったのかとなど色々考察してみましたが、結局は何も分かりませんでした。でも何も分からない、解答がないのがこの物語のいいところだと思います。解答がないからこそ、読者の胸の中でチトとユーリがずっと存在し続けることができるのだと思いました。