白井 弓子先生、WOMBS ウームズ、最終話 完結5巻 感想
※ネタバレ注意です※
怒涛の最終話です!
1話目から、残忍さと母性の温かみや切なさを感じ、とても感情を揺さぶられる作品だったなあとしみじみ思いました。
碧王星を巡る、第一移民(ファースト)と第二移民(セカンド)の戦争のお話です。
主人公であるマナは、第一移民ファーストの「転送兵」として、味方の兵士を運んだり能力を活かした攻撃をしたりして戦います。
転送兵になることができるのは、妊娠していない女性のみ。
本来碧王星に存在していた先住民ニーバス(生活習慣も姿かたちも違うエイリアンです)を妊娠して身に着けることができる、座標空間を使った瞬間移動能力を駆使して戦います。
戦局が不利になる中、強制徴兵された女性たちが愛する人との間に子供を産むことができずに苦悩し、代わりに政府が提供する人工妊娠・保育機関が、自分たちの子供を産んでくれるものだと信じて戦います。
政府から「お腹にいるニーバスには意思や生命はない」と聞かされていたものの、座標空間で姿を現すニーバスたちは自分の最も愛する人の姿をして話しかけてきます。
部隊は戦争中です。なかなか愛する人に会えない彼女たち。
愛する人の姿をするニーバスと、「ニーバスに騙されてはいけない」という気持ちとで葛藤していきます。
最終話である本編では、戦局は科学力で勝るセカンドに傾いていきます。
そんな中、マナたちが先住民ニーバスを妊娠しやすくするために妊娠できにくい身体に改造されていたこと、我が子が育てられていると信じていた施設には、自分たちの胎児ではなくニーバスが育てられていたことが発覚します。
・・・ひどい話です。
妊娠適齢期の期間を戦士として戦い、文字通り身を削って自分の子宮を差し出した女性たちに、このような仕打ち。本当にひどい政府です。
それとも、戦争とはこういうものだと割り切るものなのでしょうか。
政府の裏切りを知ったマナたち転送兵は、政府からどんどん追い詰められていきます。
追い詰められていく転送兵たちを、お腹にいるニーバスの胎児は守ろうと必死になります。
そんな第一移民(ファースト)として生きていくことが難しくなったマナたちを救うべく現れたのは、先住民ニーバスのボス。彼女は、マナたちをニーバスの仲間として迎えます。
しかし、マナとニーバスは身体の構造も本来採るべき栄養も異なります。
ニーバスに順応することは非常に難しく、仲間のひとりは命を落としてしまいます。
仲間を助けようとしても助けることができない、不条理な世界と彼女たちの無力さに、私はここで悲しくて涙が止まりませんでした。
住む場所を転々とする中で、マナたちは座標空間が自分たちのいる平面空間ではなく、宇宙にまで伸びていることに気が付きます。宇宙には、今まで手を出すことができなかった第二移民(セカンド)の宇宙船がありました。
マナたちは、第二移民(セカンド)への攻撃を計画します。
彼女たちは、お腹にいるニーバスをあやし、宇宙空間へ飛び出し、見事に戦争に勝利しました。
勝利をおさめた彼女たちは、一度裏切られた政府から英雄として歓迎されます。
ただし、政府が英雄として扱うのはマナたち転送兵のうちの数人のみ。
途中で死んでしまった仲間のことは全く扱うこともなく、政府のイメージアップキャンペーンとして利用されている状態です。
・・・ここでもやっぱり政府はひどい。
マナは戦争を終え、やっと再開できた最愛の恋人と暮らしていました。
これから幸せな家庭を育んでいくものだと周囲の人だけではなく、読者である私も期待していました。
あんな苦労をしたんだから幸せになってほしいのは当然です。
しかし、凹んだお腹を、母親が慈しむように見つめるマナ。
戦争を終え、お腹からニーバスを取り出したマナですが、座標空間の中にお腹にいたニーバスがいて、母親である自分を呼んでいるように感じていました。
もうお腹にニーバスはいないので、瞬間移動能力もないはずなのですが・・・。
そして、マナは突然、愛する恋人に別れを告げ、この世界から消えてしまい、お話は終わりました。
怒涛のようなラストで、最後はマナの幸せを祈っていたのですが・・・
果たして、彼女は幸せになったのでしょうか。