鳴川くんは泣かされたくない｜最新話17話【無料】ネタバレ

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

2023年9月27日まで

その昔 学者たちは幾何学を使い 初めて地球の大きさを知った

すると その手の内にある運命の大きさも

幾何学で測ることができるかな？

これは

広大な大陸を翻弄した 一人の魔女の話――

西暦１２１３年

イラン東部 トゥースという都市の ありふれた奴隷市場から この物語は始まる

「うーん…」

「どの女も働き者ですよ」

「この女なんか掃除の天才です」

「掃除は何を捨てるかじゃなくて 何を残したいかなの」

「素晴らしい…！ おいくらでしょう？」

「ざっと８００ディルハムですね」

「結構しますね…」

「奴隷は安い買い物ではないけど…」

「タージルさん お願い！ もう少し安くできない？」

「ふーむ」

「普段ならお断りなんですが…」

「特別に半値でお譲りしても ようございます」

「え！」

「ただし 代わりにひとつ頼みたいことがあります」

「入っておいで」

「あら かわいい」

「その子は？」

「先日 入った娘でシタラと呼んでますが」

「まだ子供ですが この通り笑った顔が なかなかかわいいもんで」

「こいつに教養を付けさせたら 高貴な方の側仕えになろうかと思いまして…」

「聞くところによると ホラズム王国の王子様は教養のある奴隷がお好きだとか」

「で 相談なんですが ファーティマ奥様」

「あなた様の家は学者の家系でしょう」

「特にムハンマド坊ちゃんはトゥースでも有名な秀才です　　お宅で学んだといえばハクがつく」

「この娘を預かっちゃもらえませんかね」

「というわけなの 兄さん お願い」

「引き受けちゃったのか！」

「この家ではもう兄さんしか教師の資格を持ってないの」

「私は夫の喪中で よそに知り合いも少ないし」

「それに 奴隷だろうと誰だろうと」

「知を求めることはイスラム教徒のつとめ… 「ハディース」の勧めるところよ」

「まあね」

「学問の基本は読誦だ　　正しくクルアーンを発音することが第一歩だよ」

「僕のマネをして声を出してごらん」

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