花は咲くか 日高 ショーコ先生、最終話 完結5巻 感想
※ネタバレ注意です※
花は咲くか、という題名の通り、とても繊細で花が綻ぶような、美しい最終回でした。
物語自体はBL作品という事で、普通の恋愛にはない沢山の障壁があります。
そもそも、主人公たちの恋愛には障壁が多すぎたのです。
蓉一と桜井さんは20近く歳は違いますし、育って来た環境も違います。
両親を早くに亡くした点では一致しているかもしれませんが、そんな2人が最後の最後で抱きしめ合う姿にとても感動しました。
桜井さんがまずとにかくカッコ良かったです。
大人の余裕を見せつつも、どこか子供っぽさがあって、とにかく可愛いのです。
最初は自分が男の人を好きになる事自体、自身が驚き受け入れずにいようとしていましたが、最終的には蓉一に心を許し、そして2人で歩いていく道を選んだかと思うと感慨深いものがあります。
桜井さんの感覚はとても正常だと思います。
今までずっと女性の人を対象にして恋愛し、付き合って来た中で、男性にときめくのですから、すぐには受け止めきれません。
しかし、最終回ではその全てを包み込んで前へと進んでいく姿が素晴らしいと思いました。
物語の基軸となったのが、心の距離感ではないかと思います。
最初はかなりかけ離れていて、表情もずっと固かったのですが、最後は朗らかな笑みを浮かべて笑っていました。
その変化が顕著に表れていたのが、蓉一だと思います。
最初の頃の蓉一なんて、まるで人形かロボットのようでした。
綺麗な顔をしていますが、表情がほとんど変わらず感情も全然見せない。
ですが、桜井さんといる時だけは本当に楽しそうな顔をするのです。
彼はとても純粋で、描く絵も彼の心の豊かさを表していました。
桜井さんが最後に「俺はお前の描く絵が好きだよ」と言うのですが、それを蓉一は満足そうに口角を上げるのです。
蓉一は何を考えているのか分かりにくいですが、とにかく素直で純粋なのです。
その表情の変化もまた、ぐっと胸を熱くさせられました。
桜井さんの気持ちがとても分かるような感じがしました。
2人の歩く恋はとてもゆっくりです。いきなり走ったりせず、優しく丁寧に育んで生きます。
ただ好きです、という言葉にもどっしりとした重みがあり、それでいて胸が苦しくなります。
蓉一が最終回でゆっくりと歩み寄り、腕を回して頰を寄せるシーンは、まるで子犬のように可愛らしくて、それでいて彼の不器用さがにじみ出ていました。
日高ショーコさんの漫画は、そういった仕草や表情の変化に敏感で、男性にも関わらず美しさが醸し出されているのです。
そして物語の最大の砦となったのが、水川家を取り巻く蓉一の父親である蓉介、それに母親の存在だったのでしょう。
彼らの死が蓉一をずっと苦しめ続け、そして水川家に関わる人全てを巻き込んでいました。
もちろん桜井さんは蚊帳の外で、難しい家庭問題は理解できません。それでも彼なりに蓉一を救い出そうと、たくさんの人を説得します。
今までずっと人形のように素直に生きてきた蓉一が、どんな思い出両親のことを見ていたのか。
それらが全て打ち明けられ、最後はハッピーエンドで終了しました。
最後に蓉一が不器用ながらに桜井さんの顔を寄せ、キスするシーンは思わずほっこりしてしまいました。
普段生活していたら見逃してしまうような心の動き、そして苦しみ寂しい思いを抱えた人の救いになるような、そんな物語でした。
性別がらどちらかという問題ではなく、もっと奥底で繋がっているのです。
桜井さんが転勤してからも、2人はお互いを思い合っています。
この関係は今後も続いていき、そして幸せになってくれるのではないかと思います。
登場人物全員を含め、とても素晴らしい最終回に仕上がっていました。