BANANA FISH、最終話 完結19巻 感想
※ネタバレ注意です※
主人公のアッシュがやっと得た平和。それはイコール普通の生活を送れることになり、自由を手にしました。
だけど彼にとってきっと虚無感もあったはずです。
心の支えである親友を超えた相手、英二を手放すことはきっとアッシュにとっては辛いことだったと思います。
けれど彼は英二を日本に帰すことを選びました。
それはお互いが生きる道が違うと感じていたから。また英二もアッシュの心境を理解したからこそ敢えて帰ることを選んだのです。
自分よりも相手を思いやり、理解していたからこその深い絆に何度読んでも感動します。
アッシュの複雑な心理を思うと、平和を満喫出来、普通の一般の青年になれたとしても孤独だったのではないでしょうか。
英二がアッシュに宛てた恋文のような手紙の内容にただただ涙が出ます。
その手紙を読んだアッシュの複雑な表情を今でも脳裏に蘇ります。
あの空見上げたアッシュの心に去来したのは何だったのか……。
ラストでのアッシュの、図書館でのシーンは本当に涙が止まりませんでした。
お互いを思いやる二人の、友情を超えた絆に、まだ学生だった私は未熟ながらも愛の尊さを学んだ気がしました。
この作品は私にとってバイブルといっても過言ではありません。
今もオススメする漫画というと、この『BANANA FISH』を真っ先に挙げる程です。
最近、アニメ化になり、彼らに息吹が吹き込まれ、ますますこの漫画の素晴らしさを再認識しました。
素晴らしい作品はどんなに時が流れても色褪せることがない、それを証明した作品ではないでしょうか。
綺麗な絵柄もそうですが、人間の心の弱さ、強さを上手く表現した吉田秋生先生の才能に脱帽です。
二人は今生で一緒になることはなくなったけど、でも心はずっと永遠です。人は永遠の愛を得ることが出来る。
またアッシュもですが、英二の強い精神面、同時に深い愛情を分け隔てなく注げる英二に色々学びました。
そんな英二だからこそアッシュは惹かれたんですね。だから私もアッシュは幸せだったと心から信じてます。
ラストは賛否両論あったようですが、私はあのラストだったからこそ永遠の愛を得られたと思ってます。
数年後の英二の、アッシュへの変わらぬ愛の深さに、深い溜息が止まりませんでした。
年月を経ても色褪せることなく、それでもアッシュを想い続ける英二に、何度も涙を誘います。
人はそこまで一途になれるものなのかと、今も永遠の愛があるのだと確信させられるストーリーです。
この作品の素晴らしさはこの二人だけではありません。
二人を取り巻くキャラたちもそれぞれ人生があり、複雑な心理を抱いている。それもこの作品の魅力ですね。
義弟のシンを守ろうと襲撃したラオ。それが原因でアッシュと英二は永遠に会うことはなくなり、それをずっと懺悔を背負い続けることになったシン。
私もラオを責めることは出来ない派です。
ラオの気持ちも何となく分からなくはないからです。ラオもまた必死だったと思います。
弟を守ろうとしたラオの一途さ。確かに手を殺めることはいけないことです。間違っています。
だけどラオの兄としての行動もまた、愛情故だと思うのです。
結果、その行為がシンを苦しめる結果になってしまいましたが……。
あまりにもアッシュを失った英二と、兄によって二人を引き裂いた結果になってしまったシンの、それぞれの心理を思うとあまりにも切なくなりますが、それをドロドロと描かない先生は本当に上手だなと感心しました。
アッシュの図書館でのシーンは本当に美しかった。苦しかったはずなのに、苦しい以上に幸福感を得たアッシュが羨ましいと感じたのは私だけでしょうか?
本当の愛を得るという人生を送れるのはどれだけの確率なのだろうか。
何十年も前の作品ですが、私は未だにそれをふと考えることがあります。
だからこそ後悔のない人生を送りたい。常にそう考えさせるきっかけを作ってくれたのが、このBANANA FISHです。
二人の友情物語というワードでは収まりきらない、あまりにも尊い愛情は誰も入り込む余地はないでしょう。
何度読んでも読み飽きません。特に最終話は涙無しでは語れないほど、こんなに美しい作品に出会えたことに、私は幸せ者だと思うし、BANANA FISHを生み出した吉田先生に感謝でいっぱいです。
最後にこの作品は私の永遠のバイブルです。アッシュと英二の深い愛情に乾杯です!