アオハライド、最終話 完結13巻 感想
※ネタバレ注意です※
両想いになり、後はハッピーエンドを待つだけ。そう思っていたのに、最終話の出だしはひやりとするものでした。洸が神妙な顔つきで何か言いかけたかと思うと、俯いて黙ってしまう。これは双葉でなくても気になる展開に決まっています。すると双葉は目を覚まして、これは夢だったのかと安心します。側にいた悠里と修子は、いつも通りに話しています。ですが、双葉が洸の話をすると顔を曇らせ、そして彼はもういないんだよと言い出すのです。これには読者からしても驚くべき瞬間でしたが、二重のトラップという事でこれも双葉の夢でした。
ドキドキハラハラする展開に、双葉は嫌な予感がします。この出だしによって、より双葉の中で抱える不安や悩みが浮き彫りになっているのです。せっかく両想いになったのに、不安がぬぐえない。その気持ちは読者が一番良く分かっています。あともう少し、という所でいつも洸はどこかへ消えてしまいました。
またどこか知らない所へ行ってしまうんじゃないか、という漠然とした予感が双葉の中にずっと残っていたのでしょう。二重の夢オチは、さすがに騙されるところでした。
こうして双葉は新学期新しい教室に向かうわけですが、洸の姿が見当たりません。彼の居るはずの席にmは別の人が座っており、名簿から洸の苗字が消えているのです。また夢オチか?という予感がしつつも、どうやら今回は現実のようです。ドキドキしながら、双葉があちこち学校中を探し回ります。また消えてしまったらどうしよう、という不安がどんどん大きくなり、双葉の焦る顔からも感情が伝わってきます。
お願いだから、早く洸出てきて!と思った瞬間、彼はいつもの緩くて余裕のある笑みを浮かべて現れました。普段通りの振る舞いで、どこかご機嫌な様子で。その顔を見た瞬間、おもわず双葉は泣いてしまいます。この時の双葉の気持ちは痛いほど伝わって来て、同情心が芽生えました。つらかったよね、良かったね、と慰めてあげたくなりました。ぎゅっと抱きしめてから、涙する双葉を見て、洸は少し照れ臭そうに声を掛けます。その表情がまたとても可愛くてキュンキュンします。初めてに比べて随分と表情が柔らかくなったなと、少し感慨深い気持ちになりました。
洸は苗字を元の田中に戻した事を打ち明け、無事に誤解は解けます。双葉の不安を知った洸は、絶対に居なくならないから、と力強い言葉を掛けてくれます。背中から抱きしめる双葉の手を、ギュッと握る。その仕草がまた愛おしくて、見ているだけでニヤニヤしてしまいます。
最後のシーンで双葉と洸が道を歩いている時に、急に雨が降ってきます。そこで二人は、お互いの思い出の場所である神社の境内で雨宿りします。中学生時代の事を懐かしみ、その頃お互いどう思っていたのか打ち明け合います。そして過去の自分へと、双葉は声を掛けてあげます。すごく落ち込んで涙に明け暮れていたけれど、将来洸と再会して両想いになるんだよ、と励ますのです。
ここでとても微笑ましかったのが、双葉のアイコンタクトに対する洸の反応です。じっと見つめる双葉に対し、洸はキスをしますが、そうじゃないと怒られてしまいます。その反応とあどけない表情がまた可愛らしく、思わずくすりと笑ってしまいました。
全部が綺麗で用意された言葉ばかりなのではなく、洸と双葉のそれぞれの不器用さが全面に出ていました。双葉は最期まで不安がぬぐえず、涙を流してしまったり。洸は不器用なせいで双葉の不安を拭う事が上手く出来ず、誤解させてしまったり。それでも最後はお互いの想いを通じ合わせ、おでこを寄せあい笑い合う姿は、感慨深くとても素晴らしい最終回でした。