ライジング! 氷室冴子さん 藤田和子さん、最終話 完結15巻 感想
※ネタバレ注意です※
ライジングは宮苑歌劇団員の養成校宮苑音楽学校出身の仁科祐紀が一人前の役者として成長していく過程の物語です。宮苑学園をダンスの学校だと信じて、ダンスも声楽もほぼ未経験の祐紀ですが、華があり合格します。入学後はやはり苦労するのですが、持ち前の明るさで乗り越えていきます。
最初は男役志望だった祐紀も娘役となり、最終巻では演出家の高師先生と石原花緯と祐紀の三人で新しい演目の開幕、というクライマックスで終わります。
演出家の高師先生はひたすら祐紀の才能を買っていて、使おうとしていますが、最終巻の作品はオーディションで役を勝ち取っています。
女優さん(宮苑ではない)の真剣さに刺激され一皮むけた祐紀を見られるのも最終話です。
演出家としての高師先生と祐紀の恋愛は気になるところなのですが、最終話でやっとキスシーンのみ出てくるので、やはり演出家と女優という関係だけじゃなくて、恋愛相手でもあったんだなあと思います。
それを感じさせないくらいの青春ものなので改めて読むとわかる程度です。
藤田和子先生の漫画で白髪は消される、べた髪は残るという小さなエッセイが漫画中にあり、それを頭において読んでいると楽しいです。
がっつりハマって読んだのがかなり若いころで、宝塚が好きな友人も皆でハマっていました。
宮苑学園という名前を使っているだけで、宝塚を連想させるような設定と舞台だからです。
女の集団という独特の仲間割れがあり、成長があり、めちゃめちゃ感情移入して、憧れて読みました。
青春時代の憧れの人が石原花緯だったくらいです。実際の宝塚にはそこまでハマらなかったのに不思議です(笑)
最終巻での石原花緯と祐紀の稽古シーンもかつてはギクシャクして、良いコンビではなかったのですが(ローマの休日を題材にした演目から仲良くなる)ものすごくしっくりしています。元からゴールデンコンビだったみたいに見えます。
作品に出てくる演目も素敵なモノばかりで、いつも脚本を読んでみたいと思っていました。
作品中に稽古シーンが出てくるので、そこだけで想像するのも楽しかったです。
競争率の高い宮苑歌劇団で、トップスターになり活躍していく影に、どれだけの努力と涙があるのか考えさせられます。多くの人が努力しているのに、消えてゆく世界。
華やかさへの憧れを持って読みますが、とても切ないです。
恋愛に一番興味がある時期に、歌や芝居やダンスに夢中になり、舞台に立っていく・・・そこにはかけがえのない時間があるのだと思います。
設定年齢からすると祐紀だってまだ20代のはず・・・一巻から読んでいくと恐ろしく成長している祐紀に会えます。大ハマりし、「その後」を読んで見たくても原作の氷室先生は既にいらっしゃいませんし、想像するしかないのです。
多感な時期に高師先生が他の生徒に個人的にレッスンをしていて、嫉妬したり、逆に祐紀にボーイフレンドができたら高師先生が別れさせたり、舞台の裏に沢山の恋愛も隠れている作品です。
多分一般の人なら恋愛にのめりこむ年齢でしょうね。
ちゃんと高師先生の昔の彼女(女優)も出てきて、作品に絡んできます。
白髪の女性陣もそれぞれ綺麗です。
白髪はべた髪(黒く塗っていない)じゃないという意味で、白髪というわけではないのですが、定説で必ず消えます。でも魅力的な役が多いです。
皆が祐紀に感情移入し、取りつかれるように読みましたが、明るさと負けない心は誰でも見習いたいと思っています。この作品を読んでいると挫折も必要、悲しいことも続くわけでは無いんだな、と思えてきます。辛いときこそ笑っていたいですね。
そんな笑いあり、涙ありの作品です。