シティーハンター、最終話 完結35巻 感想
※ネタバレ注意です※
お互いを想い合いながら、なかなか自分の気持ちに素直になれなかった獠と香が、前回の34巻でやっとお互いの気持ちを確かめ合ったのでした。一気に二人の関係性が盛り上がっていくのかと思いきや、やはりそうはいかないのです。しかも香は獠とのコンビを解消し、ミックと新たなコンビを組んでしまいます。
そして迎えた最終話。好き合ってはいるものの、意地を張ってしまう香の気持ちもよくわかるのです。香の気持ちが交錯しながらも、事件は容赦なく起こります。同時にそれぞれの登場人物たちの人間模様も描かれます。
私が印象に残っているシーンは、香が敵に車で連れ去られ、その後を獠と依頼主である美女が車で追うところから始まります。香は人質として車に乗せられているため、下手なマネはできないだろうと、敵は銃弾を獠の車に放っていきます。
しかし獠は、香を乗せている車に向かって銃弾を放つことを決めます。同乗している美女はもちろん止めます。タイヤを狙ったとしても、猛スピードを出している車に向かってそんなことをすれば大事故を起こしかねないからです。それでも「大丈夫だ。」と、なぜか確信をもって言う獠。
一方、敵の車の後部座席にいる香は、状況を見極め「くる」と思ったところで身を屈めます。その瞬間、後部の窓ガラスから銃を撃つ獠。車は道路沿いにある広告用の看板に突っ込み、他の敵達が大けがをする中、タンコブ一つで済んだと笑う香。
驚く美女に対し、あの状況なら獠は必ず撃つと思ったし、車の転落を防ぐために広告につっこませるだろうとも思ったから、とっさに身をふせて体を固定したのだと話します。
しかも撃つタイミングは、「なんとなく今だ」と思ったという香に対し、獠も「なんとなく香ならわかるかな~」という回答。呆れる美女。私も呆れました。
もう十分に、これ以上ないほどかみあっている2人が意地らしいのです。
このシティーハンターのキャラクターで、私が1番好きな人物は海坊主ことファルコンです。体が大きくて強いのに、実はものすごく照れ屋であるところのギャップがいいのです。
パートナーである美樹さんのことを大切に思っているところも素敵です。しかも彼は目が見えないので、相手が発する殺気や気配を感じ取って戦うのですが、それって冴羽獠よりすごくないですか?
そんな海坊主と美樹さんが結婚式を挙げるシーンが最終話ではあります。海坊主の頭からは終始湯気が上がっており茹でタコのようですが、一生懸命に指輪を美樹さんにはめる姿など、とても微笑ましいです。
そしてもう一つ好きなシーンは、屋上で獠とミックが香について語る場面です。
男と女が死の危機に直面したときに、今までお互いに隠していた心が素直に開かれて劇的に結ばれるという話。そんなのは嘘で、そんな時に男女が魅かれ合うのは本能的なものだ。ここで死ぬかもしれないと思った時、人は少しでも子孫を残そうと本能的に異性を求め合う。心とは関係なく。だから少し時間をおいて冷静に考えるべきじゃないかと思ったという獠。今までどおりの生活に戻って気持ちを確かめていた、と。
それで本能だったのか?と問うミックに、「じゃあない・・」と答える獠。その話の内容を陰で香は聞いています。
獠、意外とマジメです。そしてとても慎重であることに驚きます。それだけ香のことを本気で考えていて、大切に思っているということでもあると思います。大人の愛だなと思います。
そして最後には読者が納得のいくような締め方で終わります。きちんと面と向かい合って言葉で愛情を表現し、それに応える香。いつもふざけ合っていたパートナー同士から男女の関係へと落ち着き、ほっと安堵します。
それでもまたいつもの日常へと戻っていき、相変わらずの日々を送る登場人物たち。幸せな余韻を残して物語は終わります。